第43話

「千沙、朝から調子悪そうなんだけど、熱はないみたいなのよねぇ」



恋羽がそう言い、あたしのおでこに手を当てる。



「でも、なんだかボーっとしちゃって、食欲もなくて」



「風邪のひき始めなのかな? アツシ、風邪薬持ってる?」



「あぁ、持ってるよ」



案外準備のいいアツシが、カバンから薬を取り出してくれる。



そしてそれを受け取った時、教室のドアが開いて大志が入ってきた。



その姿を見た瞬間、自分の心臓がドクンッと大きく跳ねたことに、あたしは気がついた。



今の、なに……?



ドキドキして、体温が上昇していくのがわかる。



「なんだ、お前たち来てたのか」



大志のそんな何気ない言葉が、胸の中でうずく。



「おはよう大志君」



「お、おはよう、大志」



そう言いながら、思わず視線をそらす。



なんでだろう。



いつもと同じ大志なのに、今日は目を合わせることができない。



「千沙、風邪ひいたのか?」



あたしが手に持っていた風邪薬に気づき、大志が隣に座り込んでそう聞いてきた。



「ちょ、ちょっとね」



そう言い、少しだけ大志から身を離す。



このくらいの距離感、今までだって何度も経験してきたハズなのに……。



大志の体温や、甘い香水の香りが、今日はやけにきになって……。



「顔赤いぞ、大丈夫か?」



グッと寄せられた顔に、思わず小さく悲鳴をあげた。



「なんだよ、心配してやってんのに、悲鳴あげんなよ」



「い、いきなり至近距離だから、びっくりしたのよ!!」



それからも、いちいちビクビクして大志から離れようとするあたしに、大志は不機嫌そうな表情をあらわにした。



だって……。



だって、今日のあたし変なんだもん。



大志が近くにいると、なんだかドキドキして、体温も上がって……。



まるで、あたしがあたしじゃないみたいなんだもん。



そう思ってうつむいていると、何を勘違いしたのか大志があたしに向かって「次の集会に参加するか?」と、聞いてきたのだ。



突然の言葉に、あたしは驚いて顔をあげた。



「参加して、いいの!?」



「ただし、30分だけだぞ? 30分したら、アツシと一緒に帰れ。それを約束できるなら、連れて行ってやる」



うそ……。



うそ、やった!!



大志が、集会に参加していいって!!

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