第42話

~千沙side~


大志の家に突撃していった翌日。



朝からなんだかボーッとしてしまって、朝食の目玉焼きを焦がしてしまった。



「千沙、目玉焼きが真っ黒じゃないの」



と、お母さんが呆れて言う。



「ちょっと失敗しちゃった。でも食べるから大丈夫だよ」



そう言って、真っ黒になった目玉焼きを一口食べる。



うっ……。



今までの人生に食べてきた目玉焼きの中で、一番まずい。



口の中に苦い味が広がって、あたしは思わず眉間にしわをよせた。



「ほら、新しいの焼いてあげたから、こっちを食べなさい」



見かねたお母さんが、綺麗に焼けた目玉焼きと交換してくれる。



「……ありがとう」



あたしはその目玉焼きを見下ろし、昨日、大志に触れられた頭に手をあてた。



なんでだろう。



昨日から、ここがジンジンしているように熱いんだ。



まさか、大志の手でやけどをしたなんてこと、ないよね?



そう思って頭をさすっていると「自分の頭なんかなでて、なにしてるの?」と、お母さんが怪訝そうな顔をした。



「な、なんでもない」



慌てて頭から手を離し、ご飯に集中する。



だけど……。



今朝は食欲もあまりなくて、あたしは半分ほどご飯を残してしまった。



「あら、もう食べないの?」



「うん……。なんか、食欲なくて……」



「珍しく風邪でもひいたの?」



「そうかも」



「夏風邪はしつこいんだから、早く治しなさいよ?」



「はぁい……」



あたしはそう返事をしながら、ボーッと大志の事を思い出していたのだった。



☆☆☆


それから、今津のメンバーに守られながら登校。



無事に学校へついてもなんだか授業を受ける気になれず、あたしは恋羽と一緒に3階の空き教室へ来ていた。



「朝から来るなんて、珍しいじゃん」



あたしたちに気づいたアツシが、すぐに声をかけてくる。



「なんかね、今日やる気でなくてぇ」



そう返事をして、あたしと恋羽は教室の地べたに座った。



少しスカートが汚れるけれど、今日はそんなことも大してきにならない。

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