第41話
「進む道を見失う?」
力耶が、眉をよせた。
俺も、同じ気持ちだ。
進む道を見失うって、一体どういう意味だ?
「舵を失った難破船だよ。なのに、誰も船長に反論できないんだ。
チームを抜けることも許されない。
だから、チームはどんどん大きくなって、メンバーの意思とは関係ない方向へ進む」
こいつ、昨日も言ってたな。
自分と同じように、チームに反論する者がいても、それを表だっては言えないって……。
赤旗のトップは、メンバーをも恐怖で押さえつけるやつだってことか。
「きっと赤旗はこの街を飲み込むつもりだ。すべてを支配下に置こうとしてる」
カナタが、言葉を続けた。
「赤旗の次のターゲットは、わかるか?」
「あぁ……東区だ」
カナタの言葉に、俺は強と力耶を見た。
「東区を飲み込んだあと、西区も飲み込むつもりか……」
「あぁ。おそらく、そうだろう」
カナタが、うなづく。
「東区のメンバー全員に伝えろ。赤旗のメンバーらしい人間は一切街へ踏み入れさせるなと」
「わかった」
すぐに、強と力耶とアツシが携帯電話で連絡を取り始める。
しかし……。
「たぶん……無駄だ」
と、カナタがつぶやいた。
「どういう意味だ?」
「赤旗は若い男に限らず、女や子供でもチームに引き込む。そして恐怖心を植え付け、コマにして使うんだ」
「本気かよ……」
俺は、思わずそうつぶやいていた。
女子供を巻き込むなんて、信じられない。
普通じゃない。
それに、一般人にしか見えない連中が街に入ってきても、俺たちは気づくことがきないだろう。
ここまでするなんて、用意周到だな。
「……赤旗に通常のやり方が通用しないことはわかった。ありがとうな、カナタ」
俺はそう言い、カナタに笑いかけた。
カナタはこれからまた赤旗へ戻らなければならない。
そして戻った時に、ここへ来たことがすでにバレていたとすれば……。
きっと、カナタはただじゃ済まされないだろう。
そこまで考えた上で、カナタは俺たちへ情報をくれたんだ。
すべてを知ることはできなくても、できる限りの事をしなければいけない……。
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