第40話
~大志side~
千沙が帰ったことを見届けると、俺は自室のベッドに座って軽くため息をついた。
あの、負けん気で何でも首を突っ込みかがる性格は、本当に困る。
なんだって、俺なんかにかまうんだ?
千沙はその辺に入る女よりも数倍可愛い。
俺なんかと一緒にいれば、危険が及ぶことだってあるのに……。
「千沙ちゃんの無自覚って、こえぇな」
アツシが、俺の考えを察してそう言ってきた。
「あぁ。あんなのが1人でフラフラ歩いてたら、それだけで危ない」
「でも、その無自覚天然姫を、大志は愛してやまないんだろ?」
ニヤニヤしながら、アツシが言う。
「悪いかよ? お前だって福元のこと、好きなんだろ?」
「お、俺は、別に好きとかそんなんじゃ……」
そう言いながらもアツシの顔は真っ赤だ。
喧嘩は強くても、恋愛になると奥手になる。
それが、アツシのいいところ。
「ま、俺たちは好きな女を守るためにも、赤旗の行動を把握する必要がある」
俺は気を取り直し、面々をみつめた。
その中には昨日助けた赤旗のメンバーがいた。
名前はカナタと言った。
カナタは今日の午前中病院へ行ったようで、足に包帯をグルグル巻きにされていた。
やっぱり、骨折していたらしい。
医者は入院を勧めたらしいが、それを断って松葉杖でここまで来ていた。
「赤旗の行動を把握するために、ひと役かって出ようと言ってくれたのが、カナタだ」
俺が昨日の出来事を含めてそう説明すると、メンバーたちは険しい表情でカナタを見た。
まだカナタを信用していない。
そんな空気が流れる。
すると、カナタは骨折した足をかばいながら立ちあがった。
「俺にとって、浜中さんは命の恩人だ。
昨日、あの時浜中さんに助けられなかったら、あのまま死んでたかもしれない。
だから、少しでも役に立ちたいと思ってる! 俺のこと、まだ信用できないと思うけれど……。
でも、きっと役に立つから!」
そんなカナタを見て、今津と松原は目を見かわせた。
「じゃぁ、さっそく聞くけど……。赤旗はどうして急に成長したんだ?」
今津強の言葉に、カナタは一瞬言葉を失う。
そして、昨日俺に見せた恐怖の表情を浮かべた。
「それは……」
さっきまでの勢いは一気に消え失せ、声を震わせる。
仲間がこれほどまで怯えるなんて、赤旗は一体何を企んでるんだ?
「お、俺にも、詳しくはわからない。でも……赤旗は今、進む道を見失ってる」
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