第29話

俺は会場の前で足を止めて、千沙を見た。



「今日は特別だ。そのかわり、大人しくしておけよ?」



「うそ!? 大志からOK出たよ、恋羽!」



俺の言葉に頬を赤らめ、その場で飛び跳ねて喜ぶ千沙。



そのしぐさが子供のようで可愛くて、俺はいつのも癖で千沙の頭をポンポンと撫でた。



「ありがと大志!」



そう言って、勢いで俺に抱き着いてくる千沙。



「おい、千沙!」



驚いて引きはがそうとしても、背中に回された手はギュっと俺の体を抱きしめている。



くそっ……。



調子、狂うな。



髪をかきあげて、舌打ちをする。



だから、千沙をチームに関わらせることが余計に嫌なんだ。



俺が、俺じゃなくなっちまうから……。

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