第30話
~大志side~
千沙たちと一緒に会場へ入ると、入口付近にいたメンバーたちがすぐに俺に気づき、道をあけた。
波が真っ二つに分かれてできたような道を歩いていてステージへ向かう。
「うーっす」
「お疲れさまっす」
時折、周囲から声が飛んでくる。
俺はその声にいちいち返事をしないが、後ろをついてくる千沙たちがぺこぺこと頭をさげていた。
全く、お友達ごっこじゃねぇんだぞ。
ステージに上がった俺は、その様子をあきれて見つめる。
「千沙、お前はそこにいろ。俺の目の届く場所から動くんじゃないぞ」
ようやくステージ前までたどり着いた千沙に、釘をさす。
「うん……」
珍しく、俺の言葉に素直にうなづく千沙。
さすがに、何百人と集まった男どもの中にいることで緊張しているのだろう。
千沙の顔には不安が浮かんでいた。
本当に、世話が焼けるな。
そう思いチラっと福元へと視線を向けた。
俺と目が合った福元は軽く笑って、千沙の手を握ってくれた。
千沙は少し驚いたような顔を福元へむけていたけれど、さっきよりも柔らかな表情になった。
よし。
大丈夫そうだな。
俺は、集まった全員へと視線をうつした。
さすがに、3つのグループが合併したことで人数がはんぱない。
この会場内には1000人が入れるようになっているが、そのほとんどのスペースが埋まっていた。
「今津! 松原!」
俺は近くで待機していた2人をステージ上へ呼んだ。
会場内に一瞬どよめきが起きる。
こうして3人が同じミサンガを付けて同じ場所に立っているなんて、いつでも喧嘩をしていた俺たちにとって、夢みたいな出来事だった。
メンバーたちも、きっとそうなのだろう。
事前に説明していても、目で見るとまた違う反応があって当然だった。
俺たち3人が集まると、その後方で幹部クラスの連中が各チームの旗を持って立った。
浜中のドクロ。
今津のトラ。
松原のドラゴンが、それぞれの旗には刺繍されている。
「みんなもう知っていると思うが。浜中、今津、松原は1つのグループとして合併する!」
俺がそう言うと会場内には更に大きなどよめきと、歓声が沸きあがった。
「これからは、お前ら全員仲間だ! 喧嘩や争いは許さない! わかったか!?」
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