第28話
~大志side~
集会開始の10分前。
会場の駐車場はメンバーのバイクで埋まっているだろうから、俺は会場から少し離れた場所にバイクを止めて、会場まで歩いていた。
「雨か……」
バイクを降りてすぐ、ぱらぱらと雨が降り始めた。
集会が終わるころに止んでいればいいけれど。
そう思いながら会場へ向かうと、駐車場にどこかで見たことのある後ろ姿を発見した。
千沙と、千沙の友達の福元という子だ。
「あいつら……なんで……」
千沙に今日の集会のことは知らせていない。
千沙が何度か浜中の集会に顔を出していたことは知っていたから、今回はアツシにもきつく口止めをしていたのに……。
俺は眉間にシワをよせつつ、その小さな後ろ姿に近づいて行った。
「おい」
「「ひゃっ!?」」
驚いて振り返る2人。
その前髪は雨のせいで塗れていて、俺は思わず目を細めた。
「た……大志、なんでここにいるの!?」
なんでって。
浜中の集会で総長がここに来るのは当たり前だろうが。
「それはこっちのセリフだ。どうしてお前たちがここにいるんだ」
こんな夜に、雨に濡れて。
危ないとか、周りに心配をかけるとか、思わないのか?
バカじゃねぇの?
風邪でもひいたらどうするつもりだ。
そう思うと、余計に表情は険しくなった。
千沙は何も言えずにうつむいている。
雨脚は次第に強くなり、パラパラと振っていたのが、今は音を立てて地面に叩きつけられている。
仕方ねぇな……。
「入れ。風邪ひくぞ」
俺は千沙の手をとって、会場へと歩き出した。
「え? ちょっと大志!? あたし、入っていいの!?」
驚いたような声が後ろから聞こえてくる。
そんなの、ダメに決まってんだろうが。
俺はお前が危険な目にあうのも、危険な世界に足を突っ込むのも嫌なんだよ。
でも、このまま雨の中ほっとけねぇだろ。
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