第26話

☆☆☆


家を出て数分後、東地区に入った頃三段シートと呼ばれる改造したバイクが数台、あたしたちを追い越して行った。



バイクの立てた砂風と騒音に、あたしたちは顔をしかめる。



「千沙、今のメンバーっぽいね」



「そうだね。顔は見えなかったけれど、大型バイクだから3年生の幹部クラスかな」



「後ろに乗っていたのは1年生?」



「たぶんね。2年生はもう中型免許を取っている子がほとんどだし」



「千沙、なんだかんだ言ってチームの事詳しいじゃん」



恋羽がそうい言って、あたしをつつく。



「全部アツシに聞いた話よ? 大志は何も教えてくれないから」



「そっかぁ。アツシは千沙と大志君に挟まれて大変なんだね」



「大変って、どういう意味よ?」



恋羽言葉の中に揶揄の響きが隠れていた気がして、あたしは頬をふくらませた。



「別に、深い意味はないけど?」



「とぼけないでよぉ」



恋羽に向かってそう言ったとき、集合場所のライブハウスが見えてきた。



会場の広い駐車場にはすでに何台もの改造バイクが並んでいて、その周囲に男たちが固まって立っていた。



「うわぁ、すごい威圧感」



「今津と松原も集まっているもんね。今回は今までで一番大きな集会だよ」



「え? 千沙、今までも集会とか参加してたの?」



恋羽が驚いたように目を丸くする。



「アツシに頼んで、こっそりね?」



そう言うと、恋羽はあきれたようなため息を吐き出した。



「大志君、せっかく千沙を守っていたのに、かわいそう」



「大志があたしを守る? なに言ってるの?」



あたしは首をかしげて恋羽を見た。



あたしは大志に守られたことなんて1度もない。



あるのは『お前には関係ない』という、突き放す言葉ばかり。



だから、あたしは堂々行動することができず、いつもこうしてこっそり、遠くから集会を見ていたんだ。



「でも、どうしようかな……」



あたしは周囲を見回して眉間にシワをよせた。



「どうしたの? 千沙」



「今日の集会って、会場の中だよね?


いつも広場とかだったから遠くからでも確認できたけれど……。


今回は、中に入らないと、さすがに集会内容までわかんないじゃん」



集会の内容がわからないのなら、ここまで来た意味もない。



でも、会場に混ざって入ると、確実に誰かにバレてしまう。



だって、浜中も今津も松原も、全員男のグループだから。



「外まで音が漏れてきたりしないよね?」



次々と会場内へ入っていくメンバーに目をやりながら、恋羽が言う。



「ライブ会場なんだから防音でしょ? どうにか入れないかなぁ」



そう言い、2人して頭を悩ませていたとき、ぽつぽつと雨が降り始めた。



「うそ、雨!?」



恋羽が空を見上げる。



重たい雨雲が空を覆っている。



「信じらんない! こんな時に雨だなんて!」

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