第21話
~大志side~
学校から一度帰宅した俺は、クローゼットの中に大切にしまってある真っ白な特攻服を取り出した。
久しぶりに見る特攻服は今も色褪せることなく、過去を背負っている。
背中に金色の刺繍で彫られた『浜中』の大きな文字。
裏側に、同じように金色の刺繍で『浜中勇士』と、名前が書かれている。
昔、浜中チームのトップをとっていた、俺の兄貴の名だ。
10歳年上の兄貴が、高校を卒業するときにこれを俺にくれた。
『今は俺の後輩が浜中のトップに立っているが、いつかお前がトップをとれ。
そしてその時、またこの特攻服を着ろ』
そう言って、何も分からなかった8歳の俺にこれを託したんだ。
そんな兄貴はもう28歳。
家も出て、結婚し、幸せな家庭を築いている。
俺も、いつか兄貴のように千沙と一緒に生きていきたいと、願っている。
俺は特攻服をバサッとはおり、懐かしさに目を閉じた。
右頬に残る傷に触れると、今でもピリピリと痛みが走る感覚がする。
だけど、これのおかげで俺は強くなれた。
ここまで来れた。
そうだよな、兄貴……。
☆☆☆
それは、俺が中学1年のときだった。
兄貴の友人関係のおかげで、『不良』と呼ばれる人たちがその頃もまだ多く家に入り浸っていた。
最初は恐怖心を抱いていた俺だったけれど、兄貴の周りにいる不良たちはみな優しく、ちゃんと仕事をしたり学校にいったりしていて、無駄な争いをしない奴らだった。
そのため、俺は徐々にみんなと打ち解けていき、気がつけばその和の中に入っていた。
浜中勇士の弟ということで、俺はかなり可愛がられていたと思う。
けれど、そんなある日のこと。
いつも通りみんなが家に遊びに来て、俺が玄関へ迎えに行った。
その時、見たことのない女が1人混じっていたんだ。
「こいつ、勇士の彼女なんだ」
と、仲間に紹介されたから、俺は素直にその女を家へと通してしまった。
「兄貴、今でかけてるんだ。部屋で待ってて」
仲間にそう声をかけて、俺はキッチンへ向かった。
この前みんなが遊びに来た時に買ったジュースが、まだ残っている。
そう思って冷蔵庫を開けた時。
「ねぇ、勇士は元気?」
突然後ろからそう声をかけられて、俺はハッと息をのんで振り向いた。
そこには、みんなと一緒に二階へあがったと思っていた兄貴の彼女が立っていた。
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