第17話

~千沙side~


恋羽にからかわれながらも1日が終わると、クラスに見慣れない生徒が1人入ってきた。



浜中チームに入っている1年生の男子生徒だ。



そんな子があたしに用事なんてあるワケがないと思っていたので、「千沙さん!」と、声をかけられた時には驚いて目を見開いた。



「あ、あたし?」



自分で自分を指差し、首をかしげる。



1年の男子は何度もうなづき、「一緒に帰りましょう」と、言ってきたのだ。



「一緒に帰るって……君と、あたしが?」



「はいっ!」



まだ少し幼さの残る笑顔でそう答える男子生徒。



恋羽がそんな様子を遠目に見て、面白がってニヤニヤしている。



「どうして、あたしと君が一緒に帰るのかな?」



「今日、浜中さんに頼まれたんです! 千沙さんと一緒に帰ってくれって」



そう言って、誇らしげに胸を張る。



あぁ、そう言うことか……。



あたしはふぅとため息を吐き出して、かばんを手に持った。



「別に、大志に頼まれたからって来なくていいのよ?」



「そんなワケにはいきません! 俺は今日、千沙さんを無事に送り届ける義務があるんです!」



義務って、そんな……。



大志はあたしにボディーガードをつけると言っていたけれど、まさか1年生の男子が迎えに来るとは思っていなかった。



後輩を使うなんて、かわいそうじゃない。



「とにかく、恋羽もいるからあたしは大丈夫。君、もう帰っていいよ?」



そう言って待っている恋羽のところへと行く。



そんなあたしの後ろについてくる男子生徒。



これは手ごわいかもしれない。



「ね、あたしは本当に大丈夫だから」



「ダメです。俺が大志さんに頼まれたことなので、守らないといけないんです」



もう……。



テコでも言う事をきかなさそうな男子生徒に、恋羽はおもしろがって笑いはじめてしまった。



こんなに真面目そうな子が、どうして浜中チームの一員なのか不思議でならない。



あたしは諦めて「わかった。じゃぁ3人で帰ろう」と、言ったのだった。


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