第15話

~大志side~


俺が3階の空き教室へはいった時、一番に千沙の姿が目に入った。



教室のすみに座り、マージャンをしているメンバーをぼんやりと見つめている。



俺は、挨拶をしてくるメンバーに軽く手を挙げながら、千沙のもとへと歩いて行った。



「なにをしてるんだ?」



「おはよう大志。ミサンガができたから持ってきたの」



そう言って、紙袋を俺に差し出す千沙。



中を確認すると、丁寧に編みこまれたミサンガが3つ入っていた。



「悪いな」



「ううん。チームの役に立ててうれしかったし」



そう言いながら微笑む千沙に、胸がチクリと痛む。



この笑顔、なくしたくねぇな……。



「昨日、帰りに変な男を見たか?」



「え……、どうして知っているの?」



俺の質問に、千沙は驚いたように目を丸くした。



やっぱり、千沙も赤旗のメンバーに気が付いていたか。



「気をつけろよ」



「待って大志。今朝、登校するときにも同じような男を見たの。



そしたら、今津のメンバーの1人がここまで送ってくれて……」



「あぁ、今津のメンバーには俺が頼んだ。これからは登下校の時に千沙にはボディーガードをつける」



「ボディーガード!?」



驚き、目を見開いて声をあげる千沙。



その声に、教室内がシンッと静まり返った。



「ちょっと大志、どういうことなの!?」



混乱している千沙のあたまを軽くなでて、俺は黒板の前に立った。



「いいかお前ら! 今日からは全力で千沙を守れ! 悪意を持って近づいてくる連中には容赦するな! わかったか!!」



呆然としてその場に立ち尽くす千沙の前で、俺は怒鳴るようにそう言ったのだった。

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