第12話

じゃぁ、やっぱりあたしの考えすぎかな?



そう思い、視線を男から外したとき、「千沙ちゃん?」と、いきなり後ろから声をかけられて、あたしと恋羽は驚いて飛び上がった。



振り向くと、青いTシャツの男が立っていた。



「だ、誰?」



「俺、今津チームの人間なんだけど、今日は千沙ちゃんを学校まで送って行けって、大志くんに頼まれてさ」



今津チームの子……?



少し警戒して後ずさりをするあたしと恋羽。



するとその人は



「大丈夫大丈夫、そんなに警戒しないで? 大志くんの女なんかに手を出したら殺されるのはこっちなんだから」



と、頭をかいた。



「ちょ、ちょっと待って、あたし大志の女なんかじゃない!」



「え? そうなんだ? でも大志くん千沙千沙って君の事すごく気にしてたけど?」



その言葉に、恋羽があたしを見てニヤニヤ笑う。



「へ、変なこと言わないでよねっ!」



あたしは熱くなる顔を隠すように歩きだした。


☆☆☆


学校の校門まで来ると今津の子は軽く会釈をして「じゃぁ、気をつけてね」と言って、行ってしまった。



「千沙、お姫様みたいだね」



2人になると、さっそく恋羽があたしの耳元でそんな事を言ってきた。



「なに言ってるのよ」



「だって、さっきの人大志くんに頼まれて迎えに来てくれたんでしょ? まるでお姫様扱いじゃない?」



「そんなわけないでしょ」



あたしは恋羽の言葉に冷たくそう言い返し、さっさと昇降口へと向かう。


「あ、待ってよぉ! あたしも一緒に大志くんにミサンガ届けるんだから」



「恋羽は来なくていいよ?」



「あたしも一緒に作ったんだから、行くの!」



プッと頬を膨らませてそう言う恋羽に、あたしは「はいはい」と、うなづいたのだった。



一旦教室でかばんを置いたあたしたちは、3階の空き教室へと向かった。



誰も掃除をしないからほこりっぽくて、あまり好きじゃない場所。



「おはよぉ」



そう声をかけながらドアを開けると、机の上でマージャンをしていた4人がこちらを向いた。



「おはよっす千沙ちゃん!」



アツシが、すぐに手を挙げて返事をしてくれる。



「大志は?」



「今日はまだ。なにか用事?」



「頼まれていたミサンガができたの」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る