第11話
~千沙side~
翌日、あたしは鼻歌を歌いながらミサンガの入った紙袋を持って、登校していた。
ミサンガを作ったのなんて久しぶりだったけれど、我ながら上手にできたので上機嫌。
これならきっと大志も気に入ってくれると思う。
そう思っていると、前方に恋羽の後ろ姿を見つけた。
「恋羽~!」
声をかけながら駆け寄ると、恋羽が振り向いて手を振ってきた。
「ミサンガ、今日渡すの?」
「うん。どうせまた3階の空き教室にいると思うんだぁ」
「大志くん、毎日授業サボって、よく単位取れるね」
「そうだよね。サボっているくせに勉強はできるから、不公平だよねぇ」
昔からヤンチャだった大志だけれど、テストで赤点を取ったことは今まで一度もないらしい。
それ所か、学年10位以内を常にキープしているというから、驚きだ。
あたしだって、頑張って勉強しているけれど、10位以内に入れることはめったにない。
「大志くんって、なにをしても出来るから天才肌って感じだよね」
恋羽はそう言い、目を輝かせる。
こんな感じで大志のファンになる子って結構多いんだよね。
悪いだけじゃなくて、ちゃんと勉強もできて、仲間を守っているから、カッコイイんだって。
まぁ確かに、カッコイイとは思うけれど……。
ずっと一緒にいたあたしには、そこまで魅力的な存在には見えなかった。
「大志も、結構おっちょこちょいな所があったりするよ? 自販機でジュース買い間違えたり、天気予報で雨だって言ってるのに傘忘れたり」
「そうなんだ? でも、そういうギャップも全然ありだよね!!」
恋羽は更に盛り上がってしまい、興奮している。
人を好きになるとすべてが良く見えてしまうものらしい。
1人きゃぁきゃぁ言っている恋羽と一緒に歩いていると、私服の見知らぬ男が路上に立っているのが目に入った。
黒い服を着ていて、黒いキャップを深くかぶっているから、顔はよく見えない。
「ねぇ、恋羽」
あたしは、小声で言って恋羽の腕を引っ張った。
「なに?」
「あの人、昨日帰りに見かけた人に似てない?」
あたしは、昨日電信柱に隠れていた黒い服の男を思い出していた。
恋羽は眉間にシワをよせて「……わかんない」と、首をふる。
「あたしの気のせいかな?」
「う~ん……服の色は一緒だけれど、顔は見えなかったし、体格も似てるかどうかわかんないし」
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