第9話

「そうかなぁ?」



恋羽は首を傾げて、ツンッと唇を突き出した。



『それじゃつまんない』と、言いたそうな表情だ。



そんな顔されても仕方ないんだけどね?



と、思った時。



後方から視線を感じて、あたしは振り向いた。



同時に恋羽も立ち止まり、あたしと一緒に振り返る。



そこには今来た道があって、特別かわった風景ではない。



「恋羽、視線感じた?」



「うん。なんか今、じーっとみられているような感じがした」



うなづく恋羽。



視線は、あたしの勘違いじゃないみたいだ。



そう思い、もう一度道へ目をやると電信柱の影から黒い服を着た男が背を向けて出てきた。



「あっ」



と、一瞬声をあげるが、男は後ろを向いたまま走って行ってしまった。



「なに、今の……」



恋羽がつぶやく。



「わかんない」



「あたしたちのこと、つけていたのかな?」



「まさか。あたしたち悪いことなにもしてないし」



「千沙のファンとか?」



「もっとあり得ないから!」



あたしは恋羽にそう言い、ふたたび歩き始めたのだった。

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