第8話
~千沙side~
休憩時間、あたしは恋羽に手伝ってもらいながら3つのミサンガ作りに専念していた。
使う糸の色は黒色と青色と赤色。
それぞれ浜中、今津、松原のチームカラーだ。
「なんか、このミサンガ結構可愛いね」
恋羽がそう言って、出来上がったミサンガを見つめる。
「そうだね。大志たちに似合うかどうか、疑問だけどね」
大志が、このミサンガを腕に付けている場面を想像すると、可愛くてちょっと笑える。
「でもさ、大志くんってほとんどアクセサリーつけないよね」
「うん。
アクセサリーもつけないけど、やっぱり、体に直接傷をつけるのが嫌だからミサンガにしたんだと思うよ」
大志は、いつでも仲間の事を考えて行動している。
小さな喧嘩の時は遠くから見守っているけれど、大きな乱闘になると先頭きって立ち向かう。
そういうやり方をしているから、仲間から信頼されているんだ。
「できたっ」
最後の1つを編み上げて、あたしはふぅと息を吐き出した。
これが、大志たちの腕につくんだ。
そう思うとうれしくて、思わず顔がにやけてしまったのだった。
☆☆☆
その日の放課後。
あたしと千沙は何の部活にも入っていないので、2人並んで帰路を歩いていた。
部活のある子たちはもうすぐ引退とあって、張り切って後輩指導にあたっていた。
「ねぇ、千沙」
「なに?」
「大志くんと、どうなの?」
突然の恋羽からの質問に、あたしは目をパチクリさせる。
「どうって、なにが?」
「付き合ったりとかさ、しないの?」
そう聞いてくる恋羽の目はキラキラと好奇心で輝いている。
でも、あいにくあたしにそんな感情はない。
全くといっていいほど、大志は恋愛対象ではないんだ。
「あたし、別に大志の事好きじゃないよ?」
「またまた、そんな事言ってぇ」
「本当だってば、ただの幼馴染。それ以上の感情はないよ」
「でもさ、大志くんって千沙には特別優しいじゃん?」
「それも、幼馴染だから。昔からの友達を危険にさらしたくないから、チームから遠ざけているだけだよ?」
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