第5話
~千沙side~
東チームと西チームが合体するという意外な出来事があった翌日、あたしは一週間ぶりの学校へ来ていた。
「千沙おはよ」
3年D組の教室に入ると同時にそう声をかけてきたのは、友人の福元恋羽‐フクモト コハネ‐。
「おはよ、恋羽」
恋羽は栗色のショートカットで、あたしの腰まであるロンクヘアーをいじるのが好きだ。
席に座ったあたしの髪をさっそくいじりながら、恋羽が言った。
「噂、聞いたよ」
「噂?」
「東と西のチームが合併するって」
恋羽の言葉に、あたしは小さくため息を吐きだした。
もう、そんな噂が広まっているんだ。
きっと、学校中の生徒が知っているんだろう。
「あんなに喧嘩してたのに、どうして?」
「そんなの、あたしが聞きたいよ」
「大志くん、相変わらずチームの話はしてくれないの?」
「まぁねぇ……」
昨日は、一応それなりに話を聞かせてはくれたけれど、なんだかひっかかるところがあった。
下っ端を束ねるためにチームを大きくすることも、ミサンガをあたしに作らせることも。
なんだか素直に受け入れることができなかった。
「あ、そっか」
そこで、あたしはこの違和感の理由にピンときた。
「なにが、『あ、そっか』なの?」
「あのさ恋羽。チームの証ってさ、ミサンガとか使うと思う?」
「チームって、大志くんの? ミサンガって、なんか女の子みたいで可愛い」
そう答え、恋羽はクスッと笑った。
そうなんだよね、ミサンガって、なんだか可愛い。
だから、それを不良仲間の証として使うのが、あたしはひっかかっていたんだ。
「普通さ、タトゥーとか根性焼きとかだよね?」
「ん~。まぁ、そうかもね? でも大志くんって将来のことちゃんと考えていそうだから、体に残るものは避けたんじゃない?」
大志なら、そのくらいのことは考えていそうだけど……。
「そのミサンガをね、あたしに作れって言うのよ」
「千沙が作るの? すごいじゃん」
恋羽が目を輝かせる。
「なんで……あたしなんだと思う?」
「そりゃぁ、大志くんと一番仲のいい女の子だから?」
「あたしも最初そう思った。
でも、いままでずっとチームからあたしを遠ざけていた大志が、いきなりそんな事言ってくるからさ……」
あたしはそう言い、眉間にシワをよせた。
恋羽と話していたら、自分の中の違和感がどんどん鮮明になってきた。
「千沙、考えすぎなんじゃない?」
「え?」
「ミサンガの事なんて、大志くんのただの気まぐれだって。そんなに、心配するようなこと、ないと思うけど?」
「……そうかなぁ……」
「そうだよ」
恋羽は大きくうなづき、それからは話題が変わりチームの話は中途半端で終わってしまったのだった。
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