第6話

~大志side~


学校の3階にある空き教室が、校内での俺たちのたまり場だった。



授業がめんどくさいとき、ちょっとした集会が必要なときなど、学校内にいるチームメンバーが使っている。



教室内は使われなくなった道具や机などが散乱していて、ほとんど物置状態。



その中で、地べたに座ったり椅子を引っ張り出して勝手に使ったりしている。



今日は俺とアツシを含めて5人の男たちがこの部屋にいた。



全員チームの幹部クラスだ。



俺は黒板を背にして椅子に座り、教室の中央あたりでトランプをしている面々を見つめた。



「お前ら、ちょっといいか」



重い腰を持ち上げてそう言うと、全員が俺の方へ視線を移した。



「今日は、お前らに話がある」



「やっと話す気になったか」



そう言ったのは、喧嘩の時に俺の右腕となってくれているキョウだった。



西と東が合併した噂は、すでに学校中に広まっている。



こいつらは、俺がここでその話をするのを待っていたんだ。



「あぁ。お前らの耳にももう入っているだろうけど、昨日、今津と松原を西チームへと引き入れた」



「俺たちに相談もせず、引き入れた理由は?」



口調は穏やかだが、キョウの表情はすでに険しい。



「最近、赤旗が勢力をつけている」



赤旗とは、南と北を縄張りとしている大きな暴走族チームだった。



トップの名前を、赤旗夏夢‐アカハタ ナツム‐と言った。



「赤旗?」



アツシが、首を傾げてつぶやいた。



「知らなくて当たり前だ。数ヶ月前までは赤旗の名前すら知られていなかったのに、最近になって急激に力を伸ばしている。


このままじゃ、街全体が赤旗に飲み込まれるのも時間の問題だ」



俺の言葉に、3人は目を見かわせた。



「ちょっと待てよ大志。昨日と言っていることが違うだろ? 昨日は面倒みきれねぇ下っ端を束ねるためにって……」



「それは、あの場に千沙がいたからだ」



「はぁ? だったら、千沙ちゃんを帰せばよかっただろ?」



アツシの表情は、どんどんゆがんでいく。



それもそうだろう。



帰ろうとした千沙を引き留め、ミサンガ作りを頼んだのは俺なんだから。



「千沙には、できるだけ心配かけたくないんだ。



あの場でチームを大きくする嘘の理由を説明することで、安心させたかった。



急にメンバーが増えたりしたら、無駄な心配をかけるだろう?」



そう言うと、アツシは納得したような表情をして、うなづいた。



「で、本当は赤旗に立ち向かうためにチームをでかくしたってことでいいのか?」



キョウがそう言い、「あぁ、そうだ」と、俺は言った。



「大志、珍しくこっちから行く気なんだな」



「あぁ。赤旗はどうも裏があるみたいで、怪しいんだ」



「裏っていうと?」



「薬物売買、集団リンチ。仲間同士での根性焼きや、体中の刺青は普通だと聞いた」



俺の言葉に「うわぁお。大志の嫌いなタイプ」と、アツシが笑った。

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