第3話

「え? 大志が呼んだの?」



「あぁ、そうだ」



うなづく大志にあたしはとまどいながらも、ホッと胸をなで下ろした。



大志が呼んで2人が現れたのなら、ここで喧嘩は始らないだろうと思ったから。



今津強と松原力哉は、大志に促されて部屋の中央であぐらをかいて座った。



その光景を目で追っていたアツシも、大丈夫そうだと安心したのか、その和の中に入って行ってしまった。



1人部屋の隅っこに残されてしまったあたしは、なんだかばつが悪くなり、そっと立ちあがった。



ここからはチームの話みたいだし、あたしは帰ろうかな。



そう思い、大志に声をかけようとした時、「お前もここにいろ」と、大志があたしの右手をつかんで制止した。



「え?」



「俺の隣に座れ」



大志の以外な行動に、あたしはまた戸惑ってしまう。



今まで、あたしをチームからできるだけ遠ざけていた大志。



それが、今日はこの場にいろと言っている。



あたしはおずおずとその場に座るけれど、4人の不良に囲まれるというのは、ひどく落着かなかった。



アツシも緊張しているみたいで、唾を飲み込む音が聞こえてきた。



「今日は、俺たち西区のチームにとって大切な話がある」



大志が、面々を見回してそう切り出した。



「俺たち西区のチームは昔から500人を超える大きなチームだ。


俺はそんなチームを崩さないよう、ちゃんとまとめてきたつもりだった。


でも、最近になって更にメンバーが増え、俺の監視が行き届かない場所も増えてきた」



あたしは、大志の言葉にうなづいた。



西区のチームは代々何百人という若者から構成されていて、力を強めている。



最近では、その噂を聞きつけた不良たちがこぞって浜中チームへ入りたがっているのだと、アツシは言っていた。



大志はひと呼吸をおき、そしてまた口を開いた。



「そこで考えたんだ。東区の今津と松原にも、手助けをしてもらおうと」



大志の言葉に、あたしとアツシは大きく目を見開いた。



「手助け……って?」



アツシが、唖然としたままそう聞いた。



「チームをまとめる手助けだ」



「大志、それってつまり、俺たちのチームをこいつらに任せるってことか!?」



アツシが、思わず立ち上がって怒鳴った。



今まで敵対していて、散々喧嘩をしてきた2つのチームだ。



アツシの反応は当然だと、あたしは思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る