第28話 挫折と叫喚
お久しぶりです。おにまいが来週で終わるので早くもロスです。
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静岡県伊東市 城ヶ崎海岸
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「はぁはぁ……見つけた…!」
「……!?」
は?見つかったんだが?ここ静岡なんだが?
おいおい勘弁してくれよ、ナノのテレポートは人1人通すのも一苦労なんだよ。ほら見ろよ、6日目のセミみたいになってんじゃねえか。
腕輪に収納したいところだが、うっかり着けるのを忘れていた為もう放置する。
てかみんな忘れてるだろうな、ナノをしまえるブレスレット。俺も忘れてた。
「あんな大量に魔力を残してたんじゃ、補足しなくても案外見つかったかもしれないわね。」
まじ?そんな魔力出てた?なんか恥ずかしいな、おい。
「この際捕らえるのは後回しね。御託くんを……あの男の子を元に戻しなさい!」
「……?」
御託が?一体何があったんだよ。
「その態度……あくまでしらを切るつもりね。いいわ、無理やりにでも言うこと聞かせてやるわ!」
お?お?なんか話が変な方向に行ってるぞ?
「行くわよ!《ブラスト・キャノン》!!」
そう唱えた瞬間、私に突きつけた杖の先端から大きな火球が形成されていきってんな感想言ってる場合じゃないね。
「《コズミック・ストゥルム》」
私の前を遮るように、夜の星空の様な模様をしたモヤのような壁が現れる。
杖から発射された灼熱の光線はこの壁に遮られ、壁と共に消滅した。
っぶねー……当たったら絶対熱いわアレ。
「コレで終わりじゃないわよ!《リバースプロミネンス》!」
渦を巻く焔が私を囲う。どうやら拘束系の魔法のようだ?
……いや、違うな。だんだん渦が狭まってきている。逃げ場を確実に潰して焼いてくるタイプの技だこれ。
「《フラッシュオーバー》!」
「熱…ッ!」
胸辺りで大きな火が燃え上がる。これは熱い。
「更に!《バックドラフト》!」
「カハッ!」
パチン、と指パッチン。すると私の胸の内部から激しい爆発が起きた感覚を覚える。
肺の空気が絞り出され、口から少し白い煙が噴出する。
さてはあの髪の毛のトドメの爆発もこれだな!指パッチンで爆発て……どこの国家錬金術師だお前は!
「まだまだ!《マイクロノバ》8連!」
ナナの背後に小さな火球がぐるりと円を描くように出現し、1つづつ私に突撃してくる。
「……ッ!」
身体に着弾するたび小さな、しかし決してバカにできない火力の爆発が起きる。
吐く息が熱くなってきた。
「最後にこれでも喰らいなさい!あの時は詠唱の隙を突かれたけど、今回はそうはいかないわ!詠唱破棄、《エクスプロージョン》!!」
少し懐かしさを感じる魔法が投下された。
私に近付いてくるその高密度の爆発エネルギーの塊は、だんだんと大きくなっていく。
ピンポン玉程の大きさであったソレはいつしかバスケットボール並の大きさに。
前のようにブラックホールを出すか?いや、ここは城ヶ崎海岸、こんな所でこの魔法をかき消せる程のブラックホールなんざ出した日には木はなぎ倒され磯は抉られ海は蒸発するわ。色々別の罪で追われる羽目になる。
何より、そんな事をしたら民草からの評判が悪くなるだろう!論外だ!チヤホヤされなくなってしまうのは由々しき事態だ。
そもそも、そんなもん出す時間もスペースも無い。
気付けばエクスプロージョン先輩は私の目の前で……あ、着弾した。みぞおちに。
あーーー死ぬかも。
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ドッゴォォォォン!!!!
高熱、爆音、爆風。波は荒れに荒れ、森は揺れる。そして、辺りは煙に包まれた。
「ハァ、ハァ……ここまでやれば流石に……まぁ死にはしないでしょうけれど。」
「ケホッ、分かってはいたけど凄い煙ね……これは安易に使っちゃ駄目ね。」
「しかしこの煙……はぁ、ヤな人思い出しちゃったわ。」
徐々に煙が晴れていき、見通しを良くなっていく。
「さて、これ以上痛い目見たくなかったら早く……って」
「……痛いし、熱いし。散々。 」
煙が晴れた先には、パンパンと土埃を払うルナがいた。
本人は痛いと言ってはいるが目立った外傷は見当たらず、所々魔法霊装……つまるところただ服が焼け焦げているのみである。
「……これ、夢?いや、違う……なら一体何故傷1つ付いてないの……?」
別に大きなダメージが入るとはハナから思っていなかったが、ある程度は入ると思っていた。
組織の中で1番ルナの相対しているのは自分であり、ルナの特性を1番理解していたのも自分だった。
故に。対ルナの訓練を、気の遠くなるような努力を積んできた。
その結果かこれだ。
ルナの服を少々センシティブにしただけ。以上。
ポキリ、となにかが折れるような音がした。
「嘘…あなた一体何なの?なんでアレを喰らってなんともないの?人間じゃないわ……本当に、本当に怪人なの?あの噂は、本当なの?口数少ないのも?どんなにレベルの高い相手にも躊躇せずに突っ込んで行くのも?」
「…………」
「何か……答えなさいよ……答えてよ!」
それは、四天王でも魔法少女でも何でもない、ただの少女の、悲痛な叫びだった。
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……どうしよう。
ナノがどっか行った。
どうしよう、私は耐えられるけどナノはそうじゃないのすっかり忘れてた。まぁ私の変身が解けてないから死んじゃあいないとは思うけど。
あと服焦げた。私の絶対領域が!素肌が見えている!
ちくしょう、見ないようにしてたのに!妙な罪悪感あるから!
……って、そうじゃない。現実逃避はここまでだ。
いや、どうした?なんで泣いてるんですかねあの子。
私が泣かした…ってコト!?心当たりは…結構あるけど…泣かすようなことはしてないぞ!?
泣きてーのはこっちだよ、聞いたか?人間じゃないだってさ。傷付くね、全く。失礼しちゃうわ。
喋らないのとかはアレだよ、喋るとボロが出るからだよ。しょうがないじゃん。
だから……その……
「……えっと」
「ウッ……ウゥ……」
あ、ダメだ。私こういうのダメなんだ。
泣いてる子供とか相手したこと無いんだよ、私は小学校の先生じゃねぇんだよ。しかも自分が泣かした子供。
難関過ぎるだろ、口全開にして限界まで舌伸ばした状態で鼻呼吸するようなもんだ。お前らもやってみろ。
なに変顔してんの?
しかーし、私は腐っても高校教師。しかもこいつの担任だ。
ミッション!
1.泣き止ませる
2.優しく話を聞く
3.WA☆KA☆I☆
オールオーケーだ大佐!
スクールカウンセラー、やってやろうじゃねぇか。
まずは1番、泣き止ます!
「とりあえず、泣かない、で?」
……なんかすっごい吃った。
※灰島はこの身体でナノ以外とまともに喋った経験が無いため、この身体限定でコミュ障化してます。親には威勢いいのに外に出るとビビりになるのと同じだね☆
魔法少女灰島 綾鷹抹茶ラテ @ayatakamattyarate
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