ベルト、真夜中の汽笛、魔界

 用を~と言っても用事のようではなく、用を足したくて・・・、つまりは小便だが、トイレに~私が住んでいるアパートは今では世界遺産に指定されても不思議がないような長屋造りの二間で、玄関と一体になった台所と奥に六畳の部屋という質素というか安普請~アッハッハ、大家さんごめん、このドケチが! とはいえリーズナブルな家賃しか払っていないので大きなことも言えなかったが、トイレは~用を足したければ公衆トイレに行けとまでは言わないも共同? 共用? そのため風呂も必然的に~入りたければ銭湯に行けで、アパートにはなかったのである。

 そのためトイレに行きたいときは・・・、状況しだいで猛ダッシュ! 六畳から台所~玄関を閉めるなど論外で、廊下にでた途端、右向け右をして駆け込まなければならなかった。ところが場合によっては、先客! その時は臨機応変に一階まで駆け下り、ケチな大家のこれまた質素なトイレを拝借ということになってしまうのだ。今時、こんなアパートと思ってしまうが、背に腹~安いが故に他の物件は考えられなかったのだ。

 それは置いておくとして、台所はET・Tの根城? 生活の場? それゆえ進路を塞ぐようならぶっ壊しても~ハハ、それはないが、生理現象に待ったはないから押しのけてでも走っていた。そして今夜も~頻尿? 一日に何回もある尿意だが、夜中に目が覚め『お小水』などと上品ぶる必要もない私であるからションベンをしたくなり部屋から廊下を目指していると、『う、うん?』電気が・・・。いつ寝る? か分からないET・Tなので、私はET・Tを台所の消灯係に任命~えらそうに! ところが消し忘れ? ET・Tに消し忘れは絶対にない~ロボットだから当たり前と言えば当たり前で、忘れるようだったらポンコツ? それとも同居人に似てきた? ワッハッハ、それは考えられない~いや、そうなのか? それはそれとして、どうしたことか明かりが? しかも動いていたのである。

『はあ? 火の玉?』、ハハハ、ロボットがいるのに幽霊話しはないだろうから眠い目を無理やり開き窺うと、スポットライト? なんとET・Tの目から光線が出ていたのだ。あいつはもしかして・・・、ほかの惑星からきた侵略者? 今までの姿は仮で、本当は地球をねらう異星のエージェント! おバカな私を騙し地球を征服する機会をねらっていた? なあーんてアホなことを寝ぼけ頭で考えてもしかたないが、懐中電灯? 鉢巻きライト? のように床を照らしていた。

 一体、何を? 近寄ると、ET・Tは手に何やら持っていたのである。途端に私の頭の中で『ソファソー、ドレミファソ~ラソー・・・、ジャジャン』、テレビで見た~わが家にもテレビはあるのだ! 再? 再々? もっと何回も再? とにかく再放送されていた連続時代劇ドラマ『必殺仕掛人』のオープニング曲が頭に鳴り響く。そして・・・、畳針もどきの物を振り上げたET・Tが私を振り返っていた。

『ゲッ、私が何をした? 確かに悪口は山ほど言っていたが、それだけのことで殺す?』、震えながら~それはなかったが、

「ET・T・・・、何をしているんだ?」

「どうしたんですか? 快刀乱筆さん。」

「あっ、いや。トイレに行きたくなって・・・。」

「人間って、不自由ですね。」

 はあ、お前なんかに! いやいや、ここでいらないことを口走るととんでもないことに・・・。刺激しないよう当たり障りのない言葉遣いで、

「こんな夜中に、何をしているんだ?」

「それが・・・。足や首をはずしたりはめたりしていたので、パーツの一部がなくなってしまいました。」

 ロボットなのに、こ、こいつは三歳児以下? はめたりはずしたり・・・。なるほど、なるほど・・・、そういう事か! アッハッハ、今までさんざん驚かせて、ざまぁみろ! なあーんて、絶対に口にしない。

「ET・T、部品がどこかにいったのは分かるが、部屋でしていたのだから絶対にあるはずだよ。」

「私もそう思って探したのですが、見あたらないのです。」

「ふーん。」

「それでやむを得ず、この皮をくっつけたらと思い、今、やっているところです。」

「ふーん。」

 頷くが、えっ! わが家に皮を使ったものなどあるわけが・・・。いや、あった! 私は慌てて部屋に戻ると~雪山で足を踏み外し墜ちていく・・・、驚愕と絶望のなかでベルトを探すと、なな、なんということだ! 貴重なベルトが・・・。たった二本しかないベルトの一つが、無残にも切断~高級な一枚皮のものなど私に買えるわけがなかったので安売りで買った貼り合わせのベルトだったが、見る影もなく原形をとどめていなかった。これは! 金太郎アメ?

「あっ! ああ・・・。」

 言葉? など出ない。

「快刀乱筆さん、どうしたんですか?」

 どうしたも、こうしたも・・・。私は用を足すのも忘れて、その場に座り込んでしまう。

「でも、皮の接着って難しいですね。」

 そんな事、関係ない! それに尿意はどこにいった? 人間、想いもかけないことに出くわすと肝心なことを忘れてしまうようだ。加えておバカな私なので、

「ET・T・・・。そ、それで、手に持っているものはなんだ?」

 畳針らしきものを見ながらこわごわと聞いていた。

「ああ、これですか。これは接着剤を挿入する特殊な機材で、先端から出てくる接着剤をくっつけたいものに塗布し、そこに光をあてると硬化するというものなのですよ。」

「へぇ、えらく目新しいものを使っているんだな。」

「あれ、快刀乱筆さんは知らないのですか?」

「う、うん、何を・・・。」

「相当前から使われていますよ。」

 ゲッ、俺はネアンデルタール人かクロマニヨン人?

「それはそうと・・・。ET・T、目が光っていたぞ。」

「私の目はライト機能がついていて、いざとなると照らすことも出来るのです。」

「へえ・・・。」

「ただ、電力の消費が激しく、体力が著しく奪われるのが難点ですが。」

 便利というか・・・、おお、気色わる! だが、

「そうなんだ・・・。それでその針を・・・、使えば上手くいくの?」

「それは、もう。まず作業が簡単で、接着時間も短いですし・・・。」

 だんだん話が面倒くさくなったので私は切り上げると~突然、尿意を思い出し、トイレに駆け込んでいた。

 光が!~ET・Tの目? まぶしさで目を覚ますと、朝がきていた。今日も長いようで短い・・・、歳を重ねると一日がやけに短くなる~物理的には同じなのだろうが、寝ぼけ頭で顔を擦りながら昨夜? のことを思い出しET・Tのところに行くと、あれだけ自信満々~私が勝手に想っていただけ? 手こずりながら膝に着けたはずの~うう、涙、涙。こいつには所有という概念がないゆえ、なんでも自由に~つまりは強奪? したベルトの皮は、やはりというかうまくつかなかったようで、膝は部品がとれたままになっていたのである。

「うん? ET・T! 皮は・・・、貼れなかったの?」

「はい、ダメでした。どうも皮の状態が良くなかったようです。」

 それ・・・、どう言う意味? もしかして、安物だから? わたしのひがみなのか、それとも真実? 一瞬、ムカムカッとくるが、同居人をこのままにしておくのはあまりにも可哀想なので、購入してから初めてであったが、しかたなく販売店に連れて行くことにした。クソ! ベルトの件、覚えていろよ、なあーんて言ってもしようがないので、とりあえず家をでる。

 ところで私の朝飯は? それは置いておくとして、ET・Tと二人? ブラブラ歩いて店に行くと、『な、な、なんと、あの青年!』がいた。どう・・・、どのように声をかければいいのか・・・、躊躇してしまう私だが、用があって来たのだから用件を言わないわけにもいかず、

「前に、このロボット・・・。ET・Tを買った者ですが、膝の部品がとれて・・・。」

 私の声に青年はうつむいていた顔を上げると~書類に何か記入していたみたいだが、すぐに、

「いらっしゃいませ。」

 記憶に残っている爽やかな笑顔を見せて言っていた。そして、

「ああ、快刀乱筆さんですね。ご購入、ありがとうございました。」

 なんと、覚えている! ロボットだから当然?

「エッ、私を覚えているのですか?」

「それは、もちろん。大切なお客様ですから、決して忘れるわけがありません。」

 うーん・・・、この青年が本当にロボット? 信じられない私だが、覚えていてくれたので気持ちも口も緊張が吹っ飛ぶ。そこでET・Tの状態を~私に分かるわけがないので、たどたどしく説明していると、

「ああ、これですね。これなら特に修理に出さなくても、部品があるので私でなおせます。」

 そう言って青年? ロボット青年? はET・Tをつれて奥に入って行く。待つこと十分、ET・Tがうれしそうにでてきていた。そして、

「快刀乱筆さん、どうですか?」

 膝を見せる。少女が~私にも妹はいるのだ、ブティックであれこれ見ながらお気に入りの服を選ぶと、鏡で確認しながら母親に言っているみたいだ。

「E、ET・T。よかったね、きれいになおったじゃないか。」

「はい。こんなにきれいになおるのだったら、早く来ればよかったです。」

 それはそうだが、この調子だと今度は一人で来てあの青年を悩ます? 大いにあり得ることだ。

「まあ、ET・T・・・。何かあったら、私が一緒に来るから。」

 ここでクギをさしておかないと、とんでもないことになるのは決まっている。青年に私は向き直ると、

「ありがとうございました。ところで修理代は?」

「いえ、初めての修理ですし、小さな部品ですから、今回はよろしいですよ。」

 聞いた途端、ラッキーと心の中で小躍りするも、

「えっ、よろしいのですか?」

「はい、もちろん。」

 その言葉に・・・、私は青年の言葉が覆されないうちに~人間、交渉ごとでは、つい勢いで『よろしいですよ』言ってしまうが、君子豹変するで、すぐに『待てよ?』ということも間々あるので気持ちが変わる前に・・・、そうか、ロボットだから絶対にない! いやいやET・Tならあり得る? そのためET・Tの手をとるが早いか外に飛び出していた。

 見送る青年に私は頭を下げると、足早にわが家を目指す。途端に思い出したように腹が鳴るが、対照的にET・Tはスキップを~カバーだけで足の機能にこれといった問題などなかったのでうれしそうにスキップしだすが、私はおもわず『このお調子もんが!』と腹の中で悪態をついていた。けれども、

「ET・T、よかったね。修理したなんて、どこから見ても分からないよ。」

 すると、

「それはそうです、部品を付けただけですから。私だって部品があればすぐに修理できていました。」

 はいー? いったいお前に感謝の心はないのか? ビックリだが、ここは我慢の子で常識を教えてやらなくては・・・、

「ET・T、そんなことを言うものじゃないよ。それにタダだったんだから。」

「そう言えばそうですね。快刀乱筆さんは懐が痛まず、万々歳ですね。」

 こいつは! あまりにもいい性格~やはり私に似た? ウンザリしていると、見たことのあるロボットが、

「やあET・T、ちょうどよかった。これから君のところに遊びに行こうと思っていたんだ。」

「VR8、久しぶり。へえ-、時間ができたの! でも、先生のお手伝いはいいのかい?」

「ああ、先生は気分転換がしたいみたいで、車でどこかに出かけたよ。」

「そうなんだ、あんなに忙しい先生でも気分転換するんだ。」

「当たり前だろう。忙しいからとくにだし、先生も人間だよ。」

 先生も人間? まあそう言われればそうに違いないが・・・。するとET・Tが、

「確かに! あまり忙しくない僕だって気分転換しないと、やっていられないからな。」

 ハァ? お前にストレスはあるのか? 厳しく取り調べ~思わず茶々を入れたくなるが、もしかしてET・Tは私のことを皮肉っている? そう思うと憎たらしさ倍増だが、二人? 否、二台のロボットはなんか楽しそう! そしてET・Tは私を見て、

「あっ、快刀乱筆さん。こちらが板谷先生のところにいる、VR8君です。」

 紹介されたロボットはしつけが行き届いているというかなんというか、礼儀正しく深々と頭を下げ、

「初めまして、板谷家のVR8です。」

 違う・・・、ET・Tに比べたらなんという違いか! いかん、いかん、比べるのは伸びる芽を摘んでしまうから~ET・Tは子供か? アッハッハ、子供以下かもしれないぞ。まあ、それは別として、

「へぇ、君がVR8君。ET・Tから話は聞いているし、時々、二人があっているのを見たことがあるよ。」

「はい、ET・Tとはたまに話をしますから。」

 うん! もしかしてあいつはよからぬことでも言っていないか? 口が軽いからなと心配になってしまう。

「VR8君、ET・Tから僕のこと何か聞いている?」

「少しだけ。先生には大変、お世話になっていると聞いていますが・・・。」

 それはウソだろう、ET・Tがそんなこと言うか! おべんちゃらのVR8? などと思っていると、 

「先生も書いていると聞きましたが、小説ですか?」

 突如、言われる。うろたえた私は、

「あっ、いや・・・。小説はちょっと・・・、雑文なら書いていますよ。」

「そうですか、でも創作って大変ですよね。板谷先生を見てたらそう思います。」

 なんとも立派な受け答え・・・、やはりET・Tは大違いだ! でもそこまでで、腹が空いてたまらない私はそうそうに二人? ロボット二台と別れ、急ぎ足でアパートを目指した。すると、背後で二人? 二台の大笑いが聞こえていた。いやーな予感はするが、そこは我慢の子で、大至急~といっても時間はたっぷりあるのだが、慌ててコッペパンにかじりつく。やっと胃袋が満たされ一息ついていると、ET・Tが帰ってきた。

「えらく早いじゃないか?」

「今日は大家さんの娘さんがいませんから。」

 はあ? 三人? 違う、一人と二台が揃ったらいったい何を話しているんだ? 

「ET・T、VR8君とはどんな話をしているんだ。」

「たわいもない話しですよ、近所の誰々がどうしたとか。」

 なに! 噂話。此奴ら、なにを考えているんだ。それじゃあ俺の話だってしているかもしれないぞ~とは素振りにもださない。

「ふーん、そうなのか。」

「そうですよ。でも板谷先生が僕の書いたもの読んでみたいと、VR8に言っているそうです。」

「エッ、君のを?」

「はい、一度読んでみたいそうです。」

 クソ! 私ではなくET・T? やっとお腹が落ち着いたというのに・・・。

「ふーん。でも、VR8君だって何か書いているんじゃないのか。」

「いえ、彼は板谷先生の身の回りのお世話をしているだけです。」

「文章は書かないの?」

「書けば書けるとは思うのですが、先生のお世話で手一杯と言っていました。」

 お前とはえらく違うな!~などと思うが、口にすればヘソを曲げられても困るので、

「で、読んでもらうものは書いたの。」

「まだ最初の数行しか書けていません。」

「そうか・・・。じゃあ、書いたら僕にも見せてくれる。」

 なんと! 下心、丸出し。自分でもイヤになるが、でもET・Tは気づいていない? 

「はい、もちろんです。」

 ということは、見せても俺は人畜無害? それはそうだ! アドバイスするために~などと邪なことを考えるも、それからしばらくしてET・Tは原稿を手にやって来ていた。

                        

 原稿を前に、私は威厳を~威厳などあるわけないが、高名な板谷先生に見せるものなどで居ずまいを正し、さっそく目を~ウフッ、ウフフフ・・・。


 一条の鋭い音が闇を切り裂き、私の耳に届いていました。町外れにある操車場の音です。『ガシャーン』という金属のぶつかる音が聞こえると、すぐに『ガクッ、ガチャン!』と続きます。そして間をあけて~何をしているのでしょうか? 『シュ、シュ、シュッ、キシ、キシ、キシ、キシ、ゴッ、ゴッ、ゴトン』と音をたてると同時に、むせび泣く~私のお腹まで届く『ボォーッ』という汽笛が響き渡り、『ガ、ガ、ガタ、ガタゴトガタゴト、シュシュ、シュシュ、シュポポポ、シュポポポポ』と荒々しい息を吐きながら動き出していました。

 蒸気機関車でした。運転手さんは眠くないのかしら? それに、どこまで行くのかしら・・・。私の知らない街に向かって黒一色の夜のなか、星明かりと大きな丸いライトだけで、遠い街に行こうとしているのです。でも、どこまで行ったのかしら? カーブにさしかかったみたいで、『ガ、ガッ、ガギ、ガギ、シャシャッ』と車輪がレールを擦り悲鳴を上げています。

 けれども、運転手さんは慣れているから大丈夫よね。だけど・・・、だけどどうして真夜中に聞く汽笛の音は、あんなに物悲しいのでしょう・・・。仰向けで寝ている私の目に涙が湧き上がると、頬をスーと伝わり流れ落ちていきます。そしてそんな夜は、とても不思議な夢を私は見ていたのです。夢の中で、いつも男の子になっていました。


 なっ、なんと擬音が・・・、続くんだ。それに・・・、ET・Tは絶対、少女趣味があるぞ! それとも、もしかして女性だった? なんて考えながら読んでいたが、

「それはそうと、ET・T。君が書いてみたいと言っていたアラジンと魔法のランプ風のものは、どうしたんだ?」

「ああ、あれですか・・。書こうと思ったのですが、どうしてもパクりになるのでやめました。」

 パクリ? どの面下げて・・・。いかん、いかん、ロボットに表情などある分けがないが、とはいえET・Tならもしかして? チャウチャウ、絶対にあり得ない。

「よく言えるな、芥川龍之介の作品を平気で引用したり、しっかりパクっていると思うよ。」

「そうですか? 私には自覚がないのですが。」

 アングリだが、これ以上言っても・・・。

「読み進めば分かるんだろうが、これから先はどういう展開になるの?」

「どうなると思いますか?」

「はぁ? 私に分かるわけないだろう。」

「それはそうですよね、私が書いているのですから。でも快刀乱筆さん、推理力を働かせて、そこを考えてみてもらえませんか。」

 な、な、なんということを言い出す。なぞなぞ遊びじゃあるまいし、なんで私が推理しなければならないんだ。

「分からないよ、君の頭にしか答えはないんだから。」

「エッヘッヘ・・・、分かりませんか?」

 ああ、イヤだ、イヤだ、面倒くさいったらありゃしない・・・。だが、

「うーん、この展開からいったら少女が列車で旅にでる?」

「ブゥー、残念でした!」

 クソ、なにが残念だ、私は刑事でも諜報部員でもないぞ。でもここも我慢の子で、

「じゃあ、どうなるんだ。」

「それはねっ・・・。」

 やめろ、やめろ。けっこう毛だらけ、猫灰だらけ! さっさと先を言えと思うが、自由奔放な~気遣いのまったくないET・Tに私の気持ちなど分けるわけがなく、なんとうれしそうに、

「魔王と暗黒王が登場します。父親違いの二人の王ですが、暗黒王とその妹の間にできた子~冥府王も出てきます。」

 はぁ? ちょっと待った! あれ? これもパクリ? どうにもこうにも・・・。それはさて置き?

「異父兄弟かなんか知らないが、魔王と暗黒王は、なにが違うの?」

「それはですね、光と影とでも言えばいいのでしょうか・・・。魔王は浄土の支配者で、暗黒王は現世と下罰を支配していて人間に近い存在です。」

「ふーん。それじゃあ、魔王のほうがえらいんだ。」

「うーん、そうとも言えませんが、魔王は強いて言えばギリシャ神話のガイアのような存在・・・、まあ日本で言えば天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)というところですか・・・。」

「ガイア・・・、ガイアといえば大地の女神じゃないのか?」

 魔王は女性? もしかしてお前も? それはともかく、

「ふーん、それであめのみなかぬしのかみとは?」

「あめのみなかぬしのかみですか、字に書けば“天之御中主神”で、天は宇宙のことですし、主はとどまって動かない者~つかさどる者を指しています。そのため天之御中主神は宇宙の中央にいて支配する神と言うことですが、まあ、現代風に言えばビッグバンの生みの親のようなものですか・・・。そのため天之御中主神は~ビッグバンもそうですが、あらわれた途端、すぐに姿を隠してしまいます。言い換えれば・・・、エッヘッヘ、私のような存在・・・、でしょうか!」

 はぃー? お前がガイアや天之御中主神なら、私はさらに上の・・・。う、うん?他に誰かいたかな、うーん、どうなんでしょうか・・・。なんて分からないことはいくら考えても分からないので、無視すると、

「それで、暗黒王とその妹の間にできた子供、冥府王はどのような・・・?」 

 自分でサラッと言っておきながら、な、なんと兄と妹の子! そ、それは近親相姦じゃないのか? 原始社会ならいざ知らず・・・。まてよ! 原始社会でも忌避されていたはずなので、原始社会以前、つまり神の世界では許されることだった・・・? しかし、神は人間が考えだしたもの! いや違う、そもそも人間よりも前に存在していた? ああ、私には分からない。だけど、ギリシャ神話や古事記に記述があったようななかったような・・・。なぁーんて考えても、私にはムリムリ。

「それで・・・、冥府王はなにを支配しているんだ?」

「冥府王はもっぱら地獄を支配しています。」

「地獄?」

「そうです、暗黒王から送られてきた者を裁く・・・、つまりは閻魔大王ということで罪状を調べ裁きを・・・。」

「裁き?」

「そうです。人は残忍で欲深く、しかも淫らで怠惰な存在なのです。」

 自分がロボットだからといって、人間のことを、まあ、よくもそれだけ並べ上げたものだ。とはいえ、ある面、間違ってはいないが・・・。それに私の場合、どうなのだろう? うーん、怠惰は完全に合っている。いかん、いかん、内省している場合か。

「そして魔王も暗黒王も、互いに神仏を味方につけて鎬を削っているのです。」

「まるで中世の西欧・・・、それか戦国時代の家対家の闘争だな。ふーん、それで・・・。」

「エッヘッヘ、そこから先は読んでのお楽しみですよ。」  


                          TO be continued


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