第2話

学校には、もう長いこと行っていない。

行ったところで、分かりきったことしか教えてくれない。

それなら少しでも、科学的な知識を深めるのに時間を割きたい。


こうして僕は、毎日研究所に顔を出すようになった。

研究所では様々な実験が行われていて、それを見ているのがたまらなく楽しい。


そして、ここでは親族が働いているのだ。

もっとも、滅多に地下室の外へは出てこないけれど。

なのでここでは、『佐竹の子』として認識されている。

親族なので、親ではないのだが。

それを訂正していてもキリがないので、やめてしまった。


研究所には、心が躍るような薬品や器具が山ほど置いてある。

当然それに触れることはできないが、いつかはここで働きたいと思っている。


しばらく夢見心地で留まっていたが、

「光希くん、迎えの車が来たよ」

という職員の声かけによって現実に引き戻されてしまった。


僕には、兄貴分が二人いる。

一人は光治という。歳は僕より一回り上くらいだ。

何処かをほっつき歩いては道端で人と仲良くなっている。

そして夕飯の時には帰宅している。不思議だ。

明るい雰囲気の持ち主だけど、ありとあらゆることが大雑把なのでソリが合わない。


もう一人は、光幸。歳は光治と同い年。

家事をしてくれる。車での送り迎えも、彼の担当。

作る料理はどれも美味しい。恐らく、几帳面だから配分を間違えないのだ。

几帳面ともなれば、光治とは合わない。僕はこっちの__几帳面な兄の方が好きだ。

しかし、家庭環境は良いとは言い難い。喧嘩は毎日だし、殴り合いだって起きている。


だからこそ、二人が揃って「カシマサマ」に祈りを捧げるのが怖い。

迎えの車に乗りこみながら、カシマサマのことを考えてみた。


カシマサマは、守護神だという。だとしたら何故、この家系を守っているのか?

見慣れた街並みを横目に見ながら、考えても答えは出ない。

きっと僕が納得する答えではない。そして、手の届く範囲内にあるモノでもないだろう。


家に着く頃には、考えることをやめていた。今日も日常を、何事もない日々を送ろう。

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