カシマサマ

景文日向

第1話

僕の家族は、何処かがおかしい。

極めて近未来的な研究都市において、こんな風習は馬鹿げていると思うのだけれど。


毎朝、毎晩、必ず居もしないカミサマにお祈りしている。

名前は、『カシマサマ』。僕の家を守ってくれている守護神、らしい。


言っておくけれど、僕はカミサマなんて信じていない。

科学で多くの現象が解明されている今、見えない存在は必要ないから。

それを言ったら家族に怒られるので、言えないけど。


「光希、飯だっぺよ」

「今行く!」


僕は、親の顔を知らない。会ったこともない。

面倒を見てくれているのは、親族だという兄貴分二人。

それには感謝しているし、当然恩返ししようと思っている。


それでも

「カシマサマの恵みに感謝して、頂きます」

この挨拶は慣れない。


目に見えるものが全てと考えている僕が、この家で異端なのだろうか?

そんなことはない、と肯定してくれる人間は居ない。

料理の味は美味しいし、文句を言える立場ではないことも分かっている。

それでも、過去の風習なんて忌まわしい。そう思ってしまうのも事実だ。


これが、僕の日常。きっと変わることのないもの。


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