第16話 神宮寺家の伝統行事
「二人とも今度の日曜日って空いてる?」
「「もちろんです!」」
「おおう素早い反応」
私は6月に入った初週に二人に招集の連絡をしていた。
「日曜日雨の予報ですけど何するんですか?」
「私の家って昔から六月に雨を見ながらゆっくりするイベントがあるのよ」
「雨を見るんですか?」
「正しくは雨が降ってる庭を見るんだけどね?」
「わ〜日本っぽい〜」
ふわふわのロングヘアーを蒸れないように大きなポニーテールに結んでいるアナちゃんが楽しみそうにしている。
「まぁぶっちゃけそれはそれとして一緒にゲームしたいだけなんだけどね?」
「ぶっちゃけましたねお姉さま!」
ギュッと抱きついてくるアナちゃんを抱き留める。相変わらず体温の高い子だ、抱きしめてると梅雨時のじめっとした寒さも吹き飛んでしまう。
「楽しみ〜♪」
アナちゃんが喜んでくれてるようで良かったよ。私と芽亜はそんなアナちゃんを見て微笑み合うのだった。
◇
そしてあっという間に当日、私は中庭に面した客間を軽く掃除してのんびりと待っていた。
用意は結由姉と結由姉のお母さんがやってくれるし、芽亜も居候の身だからと言って結由姉を手伝っている。
「あー雨音が染みるなぁ」
私はこの雨の音がすごい好き。湿度は高くなるし、蒸し暑くなったりと確かに嫌な事も多いけど眺めている分には本当に良いアクセントだと思う。
「わ〜綺麗です!凄いです!」
「お、アナちゃんいらっしゃい」
「はい!お邪魔してます〜」
襖を開けて入ってきたアナちゃんは荷物を置くと近寄ってきて、私の膝の上に腰を下ろしてきた。
最近私の膝の上がお気に入りのアナちゃんは物凄く軽いので苦しいどころか、柔らかくて飛ぶような抱き心地の良さなので私も受け入れている。あーもうほんとに可愛い。でも私がこうしてアナちゃんを抱きしめているといつも芽亜の表情が硬いんだよね。芽亜も抱きしめて欲しいのかな。
「あ〜ほんとにアナちゃんは抱き心地最高ね〜」
「えへへっ、私もお姉さまに抱きしめられるの大好きですっ!」
「お姉さまは私が甘えても絶対に拒まないですよね?」
「え?だって甘えてくれるの嬉しいじゃん」
「そういう人を信頼してくれる所ですよ。芽亜ちゃんがお姉さまの事を好きなのも分かる気がします」
「あはは…芽亜もだけど、私そんなに魅力があるわけじゃないからね?あくまでも二人がいい子だっただけだからだよ」
「そうやって謙遜するのお姉さまっぽいです」
くすくすと笑いながら後頭部を擦り付けて来る。その度に甘い香りが包み込んでくれるのがなんとも心地いい。
「こうやって何も考えずに眺めるのも良いですね〜」
「ほんとにね」
私達二人は芽亜と結由姉が来るまで特に話したりする訳でもなく、目を瞑って雨音に体を委ねて居た。
◇
「あー!ずるいよアナ!」
「えへへ〜お姉さまは渡さないから〜」
「相変わらずモテモテだねぇお嬢様」
「そう言って結由姉も抱きつかないでよー」
二人が茶菓子を持ってやってきて、結由姉も調子に乗って二人して抱きついてきた。嬉しいけどちょっと蒸し暑いよ?
ちなみに結由姉のお母さんこと飛鳥さんは別室でおばあちゃんと二人でゆっくりするらしい。私達子供達に気を使ってくれたんだろう。
「もー先輩もアナばっかり優遇しないでください!拗ねますよ?」
「酷い脅しだなぁ…。もー仕方ないなぁ」
私は左腕で芽亜の頭を撫でてあげると気持ちよさそうに笑ってみせる。
「じゃあお嬢様には私がいい子いい子してあげますね〜」
「ちょ、お姉ちゃ…!恥ずかしいから大丈夫だって!」
そんな攻防が少し続いて、私達は4人でゲームをしていたのだけどアナちゃんが飽きたのかこんな提案をしてきた。
「生放送してみませんか?」
あなたは私を恋に落とさせたい あるみす @Arumis
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。あなたは私を恋に落とさせたいの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます