第15話 恋愛観の話

「うーん、なんだかなぁ」


私は居間で今しがた読み終えた小説を机に起きながらうーんと唸る。


「どうしたんですか?あ、それって最近発売された恋愛小説ですよね?」

「うん、イラストが綺麗だから買ってみたんだけど正直ちょっと微妙かも」

「そうなんですか?タイトルは面白そうですけど」


私が読んでいたのは最近流行りのネット小説を書籍化したもので、面白いのだけど正直少し頭を悩ませていた。


「こういうのってさ結構テンプレートにのっとって書いてる物が多いじゃない?」

「まぁ確かに分かりますけど」

「もうこれが飽きたのかもしれないわ」

「例えばどんなのですか?」

「えーっと、主人公が陰キャなのは確定でしょ?そんでもって何故か必ず一人暮らしか家族がいても殆ど家に帰らなかったりとか、なんの接点もないのに唐突にめちゃくちゃ可愛いの女の子と関係もつのとか違和感凄くない?」

「確かに普通ならまず急に惚れたりなんてしませんもんねー」

「それにさ?学校で異名付けられてる女の子多くない?」

「あー、分からなくもないですけど…ひとついいですか?」

「ん?」


芽亜はどこか言いづらそうに頬を書きながら言ってきた。


「それ全部先輩満たしてると思うんですけど…」

「………………いやいやっ!私一人暮らしじゃないし?まずそんな変な異名付けられた事ないからっ!陰キャとか満たしてるけどまず女だしセーフだから!」

「でも先輩影でなんて呼ばれてるか知ってますか?」

「え?何私、異名付いてるの?知らないんだけど!?」


私が詰め寄ると芽亜は笑って教えてくれた。


「『北山の月詠姫』らしいですよ?一年の間じゃ結構通った名前です」

「何その恥ずかしい名前!?」


異名付けられてること自体恥ずかしいのになんでそんな痛々しい名前なの……。百歩譲って月詠姫まではいいよ!北山のってなにさ!そんな枕詞要らないからぁ…。


「…先輩?大丈夫ですか?」

「もう学校行けないかもしれない…」

「だ、大丈夫ですよ!本気で呼んでくる人なんて居ませんから!…多分ですけど」

「自信なさげに言わないでー、確かにそれっぽい単語は聞いたことあるけどぉ」


芽亜がわたわたと手を振って励まそうとしてくれてるのが可笑しくて私はとりあえずこの件は飲み込むことにした。


「先輩程人気あったら告白とかよくされるんじゃなきですか?」

「え?んーまぁそれなりに?」


週一で呼び出される位かなぁ。……ほんとまずちゃんと仲良くなってから告白して欲しいよ全く。よく分からないのに好きになれる訳ないでしょ?


「良さそうな人とかいなかったんですか?ラノベデビュー待った無しですよ先輩」

「うーん…なんかこう…ね?皆私の外面と自分のステータスだけ気にして私の内面全く見てないのが手に取るように分かるんよねー。と言うか告白なら芽亜もでしょ?」

「私ですか?でもそんなにですよ?このオレンジ色の髪の毛が嫌なのかもしれないですね」


芽亜は力なく笑って綺麗な髪の毛の毛先を弄る。芽亜は短髪だし快活な雰囲気にもよく合ってるし人気が出ない訳ないでしょうに。


「いやいや物凄く綺麗な髪の毛だよ?誰がなんと言おうと私は大好きだから」

「!!」


思ったことを素直に伝えると顔を真っ赤に紅潮させて何やらボソボソと呟いている。


「んんっ。先輩が人たらしなのってそういう所何ですからね?他の人には絶対しないでくださいね?」

「思ったことを素直に伝えただけなんだけどなぁ…。あれ?芽亜にはやってもいいってことー?」


私は聞き返すと芽亜は顔を赤くしながらもずいっと二人の間にあるちゃぶ台に乗り出して顔を近づけてきた。


「そうですよ!私は先輩がその…す、好きなんですから!他の人が先輩に惚れるのは良い気はしないのでっ!」


急に面と向かって真面目な顔で言われるとは思ってなかったので私も動揺してしまった。

もう物凄く顔熱い…、絶対真っ赤っかだよ今―。


「ふふっ、別に返事を求めてるわけでは無いので気にしないでください。私は動揺してくれただけで嬉しいので」

「もー、急にそんなこと言われたら照れるじゃん!」

「あははっ、でも気持ちは本当ですからね?覚悟しといてくださいね先輩っ!」

「もーほんとにぃ…困った後輩だよ」


いずれ本当に告白されたら私はどうするんだろう。OKしちゃうのだろうか。

そんな事を考えると少しドキドキとする反面寂しさも感じるのだった。

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