第12話 突撃のアナスタシア
「お姉様〜!!」
「アナちゃん!?」
「ちょっと待ってよアナー!」
放課後、今日は芽亜にメールで残らずに帰ってゲームしようと言われていたので図書館にも寄らず、先に終わった私が校門で待っていると、走ってきたアナが抱きついてきた。
その後ろを息を切らした芽亜が追いかけてくる。運動能力がずば抜けてる芽亜が息を切らすってよっぽどね…。何があったのやら。
「はぁはぁ…もう、アナってば速すぎよ」
「だってーお姉様に早く会いたかったんだもん」
抱きついてきているアナからはミルクの様な甘い香りが漂ってきて問答無用で抱きしめたくなる。
抱きしめるのを我慢し、頭を撫でることに妥協した私は嬉しそうにグリグリしてくるアナに尋ねた。
「お姉様って私の事?」
「はい!私神宮寺先輩みたいな綺麗なヤマトナデシコに憧れてるんです!だから…お姉様って呼んでもいいですか?」
「もーアナったら…先輩困ってるじゃないですかぁ。嫌だったら断っていいんですよ?先輩」
「芽亜……」
こんな可愛い女の子に甘えた声で頼まれて断れる人がどこにいるだろうか。あっ、でも男の人にはダメ!純新無垢なアナちゃんに不埒な事でもされたらたまったもんじゃないや。
「大丈夫だよ芽亜。アナちゃんが呼びたい様に呼んでくれていいよ?私友達って芽亜しか居なかったからアナちゃん見たいな友達が増えて嬉しいよ」
「お姉様……!!」
「なんですかー、私だけじゃ足りないって言うんですかー?」
感動したのか目をキラキラさせるアナちゃんと対照的にムスッと少しむくれた芽亜の顔を見比べると何か可笑しくて私は笑ってしまった。
「何笑ってるんですか先輩っ!ほらほら、帰りましょうよ!すっごい目線集めてますって!」
◇
今日芽亜が早く帰りたがったのはアナがうちに来たいとねだったかららしい。家主でもないのに勝手に呼んでしまってすみません!と何度も謝っていたが、他でもない芽亜の頼みだし、何より来るのがアナちゃんだから謝る必要なんて微塵もないのにね。
「おお〜お姉様のお家って大っきいですし伝統を感じますね〜」
「古臭くてごめんね〜。でも日本家屋には西洋建築には無い良さがあるから!まぁ逆も然りなんだけどね」
家に着くと芽亜の時と同じようにアナは目を丸くして驚いていた。やっぱり海外目線だと日本家屋って珍しいのかな。…いややっぱり大きさが問題か。昔から来てるから疑問に思ってなかったけど普通に大きいもんね。
門から庭を抜けて玄関の扉を開けるといつもの様に満面の笑みを浮かべる結由姉が出迎えてくれる。
「おかえりなさいお嬢様〜!あれ?芽亜ちゃんもおかえりなさいだけどその子はどうしたの?すっごい可愛いねぇ〜」
「ただいま結由姉。えっとこの子は後輩のアナスタシアちゃん、友達になった記念に家に呼んだんだよ」
「そうなのね!ようこそ神宮寺家へ!」
「スミノフ・アナスタシア・イヴァノヴナです!アナって呼んでください!えっと…」
「楓お嬢様のお姉ちゃんの結由です。よろしくねアナちゃん」
「お姉様のお姉様…。なるほど!女帝ってやつですね!」
「いやそれ違うわよアナ…」
「あははっ面白い子だねぇ」
「でしょ〜?芽亜に負けないくらい可愛いんだよ」
結由姉が身長の低いアナちゃんの目線に合わせるために屈んで挨拶をするとアナちゃんが結由姉に抱きついた。
「おおぅ!どうしたの!?」
「結由さん、ピンク色の髪の毛綺麗〜」
「地毛なんだよー?アナちゃんも髪の毛ふわふわだねぇ」
軽くハグをしたアナちゃんは離れると私に続いて靴を脱いで上がった。
「アナちゃんってもしかして抱きつき癖あるの?」
「えー…私抱きつかれた事ないんですけど。それなら悲しすぎません?」
小声で芽亜に耳打ちすると芽亜は笑ってそう返してきた。さっきの結由姉の時に思ったけど絶対挨拶にハグとかする習慣あるよねこれ。
ならなんで芽亜にはハグしてないんだろう。……気になる〜!
「アナちゃんはご飯食べていく?」
「いえいえ!そんなお世話になるのは悪いので!ちゃんと程よい時間にお迎えお願いしてるので!」
「別に遠慮する事ないんだけどな〜」
「でもお姉様とは今日出会ったばっかりですし…悪いと言うか…」
「アナ?先輩はこういう人なのよ。会った時間なんて関係なく仲良くしてくれる人なのよ」
「そんな大層なものでもないけどね…。まぁじゃあそうだね、次来た時は食べていってね?」
「はい!分かりましたぁ!」
私と芽亜は素早く部屋着に着替えると私の部屋に集まった。芽亜の部屋と私の部屋は隣同士なのでもうほぼ広いワンルームの様な物だ。
「お姉様達部屋着だ〜私も持ってきたら良かったなぁ」
「制服居心地悪い?」
「うーん、嫌いじゃないですけど…。部屋着の方が好きです」
「あ、じゃあちょっとおいで?部屋着貸してあげる」
「いいの?芽亜ちゃん」
「アナだし別にいいよ!」
「わーい!」
芽亜はアナちゃんを連れて自室に戻る。
しばらくして戻ってきたアナちゃんは大きめのTシャツと薄手のパーカーに包まれた姿で戻ってきた。普通ならブカブカでダサいかもしれないが着ているのはあのアナちゃんだ。余った袖があざとさを引き立てていて、恋愛した事ない男の人なら1発で落とせそうだよ。
「アナちゃん可愛い〜♡」
「そうですか〜?芽亜ちゃんの服おっきくてブカブカなんです」
「あなたが小さいからよ…アナ」
「まぁじゃあ何しようか?」
「アナってそういえばゲームってするの?」
私はゲームのカセットをまとめている箱を出してきて何をするか迷う。というかその前にアナちゃんがゲームするのか確認忘れてた!ナイスだよ芽亜!
「ゲーム好きですよ!日本に来たきっかけもゲームでしたし〜」
「そうだったんだ。え、なんのゲームが好きなの?」
「結構色んなジャンル遊びますけど…最近はこれです!」
そういってスマホの画面を開いて見せてくる。アナちゃんのスマホに写っていたゲームは…大人気の国民的ゲームであるモンスターハンターだった。
「これ好きですっ!!」
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