第8話 結由姉とゲーム

 それからというもの芽亜の引越し関連は怒涛のように進んでいた。元々最後の入居者だったこともあってスムーズに事が進み、週末には引越し出来そうというところまで来ていた。

 そして荷造りのせいで部屋に生活スペースが取れないらしいので芽亜が泊まりに来ていた。


「泊めてもらってありがとうございます先輩」

「これから一緒に暮らすんだから、言いっこなしだよ」

「本当に先輩とおばあさんには感謝しかないですよぅ」

「困った時はお互い様だもの。遠慮しないで?それに私もゲームの対戦相手ができて嬉しいもん」


 私と芽亜は最近はパーティ用の格闘ゲームにハマっていて、結構本気で練習してるのだ。


「目指せVIP入りですもんね!」

「結由さんはゲームやらないから今まであんまりこのゲームやってこなかったけど、競う相手がいるってこんなに楽しいんだね〜」

「それは分かります〜。私も最近かなり実力上がった気がしますし!それに日本のプレイヤーの実力高いですね〜びっくりですよ」

「やっぱり生みの国だからかな?私と芽亜は実質日本対イタリアね」

「え〜!やですよ〜!私も先輩と同じ国が良いです〜」

「それじゃ国際戦にならないじゃない」


 私達はくだらない話をしながらゲームの準備をしていく。

 アニメもゲームも趣味が似てる友達なんて初めて出来たなぁ。…ううん、多分同じ趣味の子は居たけどこんな対等に話せる友達が居なかったな。


「よし!今日は勝ち越すから!」

「やらせませんよ!!」


 ◇


 私達はご飯のあともしばらくワイワイとゲームを楽しんで、気がつくと夜も深けていた。


「あ〜楽しかった〜」

「あれ?もうゲームはいいの?二人とも」

「うん、ちょっと休憩〜」

「そんなに熱中できるんだね〜、凄いなぁ」


 私が縁側に腰を下ろして春の冷えた夜の冷気で火照った身体を冷やしていると寝巻き姿の結由さんが冷えたお茶を持ってきてくれた。


「結由さんはゲームとか苦手なんですか?」

「うーん、あんまり対戦とか苦手なんだよ〜」

「結由さんは対戦ゲームが苦手なだけで単純なやり込みゲームとかの方が性にあってると思うわ」

「やってみないと分からないなぁ」

「そう言うと思って〜」


 私は立ち上がると以前買って置いたものを取り出した。


「結由ねぇ…あ、結由さん!が得意そうなゲーム買ってきました〜!」

「え?わざわざ私の為に?そ、それに今結由姉って呼ばなかった!?」


 ……呼んでないもん。今更昔の呼び方なんて恥ずかしいもん。


「それはいいでしょー?それより結由さんもうすぐ誕生日でしょ?ちょっと早いけど誕生日プレゼントだよ」

「楓ちゃん…!」

「おわっ!?」

「お〜!!」


 感激した様子の結由さんが急に抱きついてきた。結由さんの甘い果物の様な匂いに一瞬にして包まれる。


「楓ちゃんが私の為に…!もう今日を記念日にしたいくらい!」

「結由さんの誕生日なんじゃ…?」

「もう大袈裟だよ結由さん。それよりさ、三人で…遊ばない?」


 私はゲーム機にさっき結由さんに渡したのと同じRPGゲームを起動して見せつける。

 芽亜も持ってたはずだから、これで晴れて三人で同時攻略ができる!リア充にしか許されない同時進行だよ!!夢だったんだからね!!


「いいですね〜!是非やりましょ!」

「だ、大丈夫かな…。私どんくさいよ?」

「いいのいいの!結由姉と遊びたいんだもん!」

「ふふっ、お嬢様ったら子供に戻ったみたい」


 私はそう笑いかけられて我に返ると恥ずかしくて顔を逸らした。


「い、いいじゃん。学校じゃこんなの誰も一緒にやれる人居ないんだもん」


 私は結由姉にもう一度笑いかけると本音を伝える。


「また昔みたいに一緒に遊ぼ!」


 それから三人で夜が更けるまでRPGを攻略してたんだけど、すっごい面白かったなぁ。

 是非みんなにも聞いてもらいたいからその話は次の機会にでも…ね?

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