第7話 芽亜の楓に対する思い
「うちで暮らすかい?」
おばあちゃんが提案した言葉を芽亜はすぐには受け止めきれていない様だった。
「そ、そんな悪いですよ!そこまでお世話になるなんて…!」
「いや何、部屋も沢山余ってるし一人くらい増えようとあまり変わらないよ。それに芽亜さんは楓ちゃんの初めての友達だからね。そんな子が困ってるのを見過ごすことは出来ないさ」
「え、ええ!?せん、ぱい?どうしよう…」
芽亜は突然の事で動揺しきっている様子で困り顔でこちらに助けを求めてきた。
「おばあちゃんも別に強制はしてないからね?あくまでも選択肢のひとつとして加えてって意味だから。でも、私も芽亜と一緒に暮らせるなら嬉しいな」
「ほんとですか!?……どうしよう。」
芽亜はしばらく困り顔で考え込むと何か決心したのか姿勢を伸ばして頭を下げた。
「よろしくお願いしても…いいですか?」
「あぁ良いとも。神宮寺家一同歓迎するよ芽亜さん」
「ありがとうございます!」
こうして芽亜はうちで暮らすことになったのだった。ちなみにこれは後から分かったのだが、たまたま今イタリアに居たおじいちゃんが芽亜の両親にお世話になった様で「芽亜さんの面倒を見てあげてくれ」と連絡があったらしい。
世の中広いようで意外と狭いなぁと実家んさせられたよね。
◇
その日はご飯をご馳走になって、私は吉野荘への帰路を歩いていた。
「先輩と…同じ家で…///」
考えただけで顔が熱くなってくるのが分かる。本当にどういう巡り合わせでこうなったのかな。ぶっちゃけ最近は奇跡が続きっぱなしだ。
「幸せ……だなぁ」
私がイタリアからこの学校に留学してきた当初、私も結構騒がれていた。まぁ留学生だし、こんな髪の毛だから噂されるのはある程度分かっていたけど。
そんな中だった。楓先輩を見つけたのは。
楓先輩は新入生の間でも凄い話題に上がっていた絶世の美少女との呼び声も高い女の子だった。艶のある美しい黒髪に整った顔立ち。雪のように白い肌や優しそうで愛おしいタレ目。大和撫子の具現化と言っても差し支えないような先輩を見た時、私の心は何かに落ちたような音がした。
初めは他の人と同じように遠巻きに見てるだけだったのだけど、たまたま図書室で先輩を見つけたあの日。私は気がついたら話しかけていた。
今となってはあの時勇気をだして本当に良かったと思えるし、あれがなかったら今でも先輩との接点はなかったと思う。
「でも本当にあの先輩は優しすぎる…よね」
先輩は分け隔てなく誰にでも優しかった。どんなに面倒くさそうな相手でもしっかりと話を聞いてあげるし、嫌そうな顔ひとつ見せない。
そういう所が圧倒的な人気の要因のひとつだった。
「だから私は先輩を守るんだ…!」
ひっきりなしに話しかけられて大変そうな楓先輩を守る。私のエゴに近いけど、それでも何もしないのは私が我慢ならない。
先輩は私に対しても本当に毎回優しくしてくれる。本人はそんなつもりはあまりないようだけど…。天然のたらしだなぁ先輩は。
私は決意を新たにすると同時に急に決まった先輩との同棲生活に夢を馳せて思わずにやけてしまうのだった。
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