第25話

天災から、1つの国は5つの街へと分かれた。そして、この東街は1番豊かな土地である。天災後、大地は枯れたが彼らには地下深くの水路を見つける術があった。街に広げる知識があった。

身も守るための兵士が多くいた。それらを使う高貴な人間も多くいた。街を営む上下関係を乱さぬまま、彼らは安全な暮らしをそのまま味わう。閉鎖的な空間にしては、住民の血が近すぎてしまうから、時々移民を受け入れる。そこから新たな知識を得て、街を発展させる。

領主と共に、そうして街を守ってきた父を、この街の次期宰相、灯羽とわは誇らしく思う。


今年で20になった灯羽は父親から業務の半分を任せてもらえるようになったり。次期領主の宗との仲も良好。互いに友として、街を導く者として、日々精進しているのである。



「灯羽様ー!!」

巳早みはや、ようやく来ましたか。どうでしたか、北街は」

「それが……」

巳早はこの街で諜報部を担当している。諜報部は東街以外の街の監視を担っており、定期的に調査員が各街へ派遣される。前回は西街が賊に襲われ、崩落。今回は北街の調査だった。



「街の一部が崩壊?どういうことですか」

「は、はい。調査員によると、一部、研究施設等が集まる場所が壊滅。街の中央部などで激しい戦闘の跡が見受けられたようです」

「内部に潜入は?」

「はい、この報告を持ち帰った者以外は街に」

「北街はそれなりの防衛体制を備えた街、賊に襲われるとは考えにくい。しかし、北街に被害を与えられる街など……」

力で順位をつけるならば、上から東、北、正、南と西ではそれほど差はない。それに、東と北、北と正の間には大きな差がある。



「商人に化けさせて数名潜り込ませています。詳しい情報は明日以降になるかと……」

「わかりました。私は父上たちに、貴方は仕事に戻ってください」

「はい。失礼いたします」

領主様、父、そう様、私の4人で緊急に会議が開かれた。北街が襲撃されたというのは、私たちの街にとっては、かなり重大なこと。あそこは知識の宝庫であり、これまでも数名金品を渡し、東街へ移住させている。


この街の防衛体制ならば、そう簡単に賊やほかの街の侵入を許すことは無い。しかし、油断をすることは命取りになる。一刻も早く北街を襲った者について調べ、対策を練るべきなのだ。


「灯羽、お前はどう思う?今回の騒動、五大街以外の集団が関わっていると思うか?」

「可能性はあるかもしれません。ですが、それは難しいです。宗様もご存知の通り、天災の後、街周辺は廃れ、他国との繋がりも絶たれました。もともと広大だった私たちの国も、5つに分離、他の国もおそらく同じような被害を受けているでしょう」

「こちらに攻める暇はないということか」

そうだ、離れた他国を攻めるよりも自身の街や国を建て直すことの方が今はどこにとっても優先される。私たちの街はたまたま五大街の中で被害が少なく、優秀な人材がいただけのこと。だとしても慎重な姿勢は崩せないのだが。



巳早の連絡は3日後の早朝にやってきた。

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