第8話
水は命の源で、生命線。この枯れた世界で、水がどれほど望まれるのか。水を求めて何度も争いが起こった。ここ、正街は幾度も戦に打ち勝ち、この都市を作りあげ、暮らしを守っている。移民が僅かに暮らしているが、厳しい審査、検問を通らなければならず、門の前で死に絶える者も少なくなかった。
正街、5代目首領、
「昨夜の騒がしさが嘘のようだな」
昨夜、水源の祭が行われていた。祭の痕跡が少し残っているが、それも昼頃には片付けられるだろう。今日は確か、狩人たちが狩りに出る日であったはずだ。肉を失わないため定期的に決まった数だけを狩っている。狩りは肉をとるだけでなく、森の管理を合わせて行っている。いくら戦に勝っても敵がいなくなるわけではない。何かしらの痕跡を探すことも必要だ。
「
「はい、首領殿。今回も問題なく狩りを行えると思います」
「今回は見回りを重点的に頼む。西街が賊に襲われたそうだ」
「それは心配ですね。承知しました、少し時間を早めて狩りに向かいます」
近くにある街、水を得て生きる手段を得た街は5つ。ここ、
この正街では、首領の下に部隊をいくつか置いている。狩猟と偵察を行う第一部隊、戦時に駆り出される第二部隊、街内の管理を行う第三部隊。街の各所に第三部隊の拠点を置き、違法侵入者の発見にも役立てている。1番栄えていると言われる東街ではもっと大きな組織になっているだろうが、正街はこれで十分であった。
東街は天災の影響が少なく、旅人の話ではほかの街とは別世界のようらしい。まるで、かつての平和な時代がその街にだけ残されているそうな。まぁそれもそのはず。そもそも5つに分断された街は1つの国だった。天災により地が割れ、人が死に、人々は自分のいる場所から1番近い安全な場所へと移動した。国の中枢であった東街には、そんな人々を養うだけの蓄えがあり、設備もあった。東街が離れ、物流が止まった各街では、すぐに独自の政策が練られ、時には戦をして、今の形を得た。
神が与えた試練か、はたまたただの暇つぶしか。どちらにしろ、我々は生きることに必死になっていた。いつか、この正街にかつての輝きを戻す。東街のような、いや、それ以上の発展を遂げさせてやる。
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