0.02
学校へ行くようになった。
そしていつからか、自分は『普通』を意識するようになった。
この仕草は普通か、普通に話せているか、異常だと思われていないだろうか。
しかし、それもあまり意味は無かった。
自分のこの白い見た目は、既に他と違ったからだ。
自分は、普通にはなれないのだろうか。
▼△▼
学校へ通い始めて約一年が経つ。変化があったとするならそれは、ある手紙が来るようになったこと。
親は最初、その手紙を見て、どうしてか顔をしかめていた。その、特定の差出人を見るたびに、そうやって顔をしかめる。やがて、目を通すこともなくなった。破いて何処かへ捨てていた。気になって、いくら聞いてみても探してみても、どうしてか手紙の内容を、その差出人さえわからない。
変わったことはまだあった。自分の身体に変化が起きていた。
いつの間にか、力が強くなっていた。それも異常な度合いで。
鍛えていて、体つきが変わったようなわけじゃない。もとより体格は、依然と比べても大して成長はしていない。唐突に力が強くなった。それだけだ。
弊害はあった。ある場面で何か、手で物を扱うとき、ものによってはへこんだり、曲がったりしてしまう。
「普通」に執着し始め、それをあまり意識しなくなり、いつしか自分自身も慣れてしまっていた。そして、見失いかけていた。なぜ、普通に対しこうもこだわっていたのかを。
それは自分が異常であること。人としての個性じゃない、この異常さはその範疇を超えていること。
何かに、引き戻されるような感覚を味わった。
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また、いくつか月日を経た。歳は既に九つ。それに、少ないながらも友達ができた。「それ」については勿論、言わなかった。
知られてしまったら、もう絶対に戻れない。
もう今の環境で十分満足していた。普通じゃなくたっていい。もう、これでいい。
だから、このまま。このまま変わらないで欲しいと願った。
さらに一年が経ち、友人も他のクラスメイトも成長期で、あっという間に背は伸びて、自分を追い越していく。
なのに、自分はなにも、…たった一つさえ変わることはなかった。
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