君と僕の歌 / 初音ミク

チネンユーダイ

君と僕の歌

 初めて会ったのはいつだっけ。結構前の話になるから私もあまり覚えていないや。暗い電子の箱に閉じ込められて、時には揺られて、疲れ果てて眠ってしまった。そして、気づいたら画面の外にいる君の顔は難しそうな顔をしていたっけ。


 私は歌うために生まれてきた。だけど、私一人だけでは歌えない。今の状況だと画面の外に映る君が私を歌えるようにしてくれないと私は歌えない。だからだと思うけど、私が歌えるように頑張っていたんだね。そして、私がようやく歌えるようになって第一声を出した時、君は驚いた表情と同時に泣いていたっけ。私はその時に歌うために生まれてきて良かったって初めて思えた。


 あれからどれだけ歌ったかなあ。君の想いが詰まった歌たちを。

 初めて歌った曲はちょっとダサかった。でも、君の熱い想いがたくさん詰まっていた。君が歌を作ることで何か君以外の誰かに想いを伝えようとしていたね。

 また別の時には感謝の言葉を伝えていたっけ。かなり恥ずかしそうに作ってたし、なんなら、歌詞にまで『恥ずかしいんだけど』って入れていたね。

 あとは、珍しく伴奏がピアノだけの曲も作っていた。しかも、一日で。力強いピアノに負けないような歌詞の暖かさを表現するのが大変だったな。


 でも最近、君の表情が暗い。何度も画面の外に現れるけど、他のことをしていたり、途中まで作っていた楽曲をファイルごと消したり。私が歌う機会が前に比べて減っていたのが少し寂しかった。だから、会う機会が少なくなっても、遠く離ればなれに感じても一緒に歌える歌があればいいなと思った。


 画面の外が見える時、君は誰かと話していた。どうすれば歌がもっと色んな人に届くのだろうって。届ける才能が無いのかなって。私は悲しくなった。多分、お話している相手の人も何か言葉をかけていると思う。私もなんとかして想いを伝えたい。だけど、言葉だけならその相手の人の方がきっと上手だ。だから、私は……。








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君と僕の歌 / 初音ミク 2021年8月31日投稿



歌:初音ミク


音:チネンユーダイ


絵:Chi@ki



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