第189話 本戦ー2日目・その3
―― イベントマップ『陽火団』の拠点内。
「初日は手酷くやられたね~。結局その後もコア持って逃げるので手一杯で何も出来なかったしね~」
「あれ、目立ってたから仕方ないですよ。何とか隙をみて拠点を取り返しただけでよしとしましょう」
「目立つの込みで本来なら余裕で返り討ちに出来る算段だったんだけどね……あそこで闇属性とか聞いてないよ~」
「それは、本当にご愁傷様としか……」
「ともかく! こうなった以上、敵を引き込んで私たちが守りに入る……という手はなくなったわ」
今そこではクラン『陽火団』の主だった面々が集い、今度の方針について話し合い(愚痴含む)が行われていた。
「まあ、既にポイントで大分遅れているんで攻めないと負け確定ですよね」
「なら、どこを攻めるべきか……」
まず、今まで集めてきたマップデータを囲み、それを見ながら現在の状況を整理していく。
最初に指した地点は『Seeker's』の拠点。
「昨日散々うちを追い回してくれた『Seeker's』は消耗が激しいと思わるカグシ、バッキュンを拠点に引っ込めて現在はメルシア、メキラを中心に部隊を編成し素材集めしつつ小競り合いしてる感じです。『快食屋』も似たようなもので今のとこお互いが出している小部隊を削ったり削られたり……というのが全体の様相ですね」
次に指したのは『
「『快食屋』、モルダードのとこは論外ね。あの化け物を相手取る余裕は今のうちにはないわ」
「ですね」
「『Seeker's』も相性最悪なのが判明したからできる限り近寄りたくないわね~」
「じゃあこのふたつは今は警戒だけして見送り、と」
メンバーのひとりがペンらしきもので地図に線を引き、両クラン拠点にバツ印と要警戒の文を着ける。
「ここで心情的には『
クラリスの大本命が無理と見るや、すぐに『怪人の
「ポイント狙いなら、うちより先に復活した……何とかの剣?というクランを狙った方がいいのでは? 正直、あっちの方がやりやすそうですよ?」
「そうなんだけど、それで意図せず同じ考えのクランとブッキングしたら不味いし何より……」
「……奪取ポイントが、減る」
「え、本戦に奪取ポイント適応されてるんですか!? 初耳です!」
「私たちも、本戦が始まってから……というかその何とかの剣のクランが消し飛んでから初めて知ったわ~。ほら現在の進行を表示するウィンドウよく見てみて」
「あ! 既に本戦ポイントが計上されてる! それになんとか剣のポイント有り得ないほど低いんだけど!?」
本戦参加6クランの現在の総合貢献度が表示されるイベント専用の画面はメニューで直にアクセス出来る。
そこを見ると使えはしないが総合貢献度に応じて、今も本戦ポイントを獲得しているのが対戦の進行具合を見せるウィンドウに表示されていた。
クラリスも最初、これは現在状況を知らせる“ただの親切”と思っていたのだが……あの時『天下独尊の剣』が消し飛んだ時にポイントが減少したのを見てその認識を改めた。
「恐らく“基本のルールはほぼ同じ”って説明に含まれるから、敢えて明記されてなかったのでしょうね。勝利ポイントが固定値から成果制になっただけで、実際に奪取ポイントのルール自体は同じだから……それにしてももっと細かく説明するべきと思うけど」
「相変わらず随所で意地悪いな、ここの運営……」
「これなら連勝ボーナスとかもありそうじゃない? ほら、他クラン連続で退場させるとかで」
「おお、それはありそう!」
メンバーたちが勝手に考察で盛り上がりそうところにパンパンと流れ切る拍手が鳴る。
「はいはい、話を脇に逸らさないでください! 見た感じ総合貢献度自体は減らないみたいだから勝敗には関わりませんが……ポイントを奪うのは割合計算みたいですからポイントが高い方を襲った方がリターンも大きいですね。……正直クラマスの秘策破れ、このメンツでうちはもう優勝が難しくなりましたからこっちに狙いを変えるしかないです」
「最終的にもっともヘイトの高い方が総スカンを食らうルールだな。別に珍しくもないけど……」
この手の対戦ではよく弱い方、もしくは弱った方だけが一方的に狩られ続けるなんてことがよく起きる。
それを防止するため、最初は弱い方、最後には強い方が集中砲火を浴びるルールを形成するのは特段珍しいことでもないのだが……。
「まあ、今イベント、この仕組みでどこが一番狙われやすいかっていうとね~」
「大体想像は付きますよね」
「流石に偶然だと思いますけど、ね?」
何かに気付いた『陽火団』の面々は顔を見合わせて苦笑を浮かべる。
イベントやそれ以前からも
「兎にも角にも、これで目標も定まったことだし早速準備に――」
「―― 敵襲です!」
「……相手はどこのクラン?」
「『怪人の
まさかの『怪人の
恐らくポイントの仕組みはあっちも気付いているであろうし、前日そこそこ被害を負った彼らが狙うなら手頃なのがもっとも深手を負っている彼女ら『陽火団』か『天下独尊の剣』だからだ。
でも警告して来たものの歯切れの悪い様子に、ただそれだけではないことをクラリス含めて場の全員が感じ取っていた。
「どうしたの、何かあった」
「それが、連中がちょっと変で……」
「変って、具体的に何がかな~?」
「それは……口で言うより直接見たほうが早いかと」
「ふーん……なら、みんなで行きましょうか~」
話し合っていたものを連れたってクラリスは、戦場の見渡すために上に登り拠点のテラスに身を乗り出す。
そこにあったのは……。
「あれは……機械の、身体」
……所々複雑な機械の武装をその身体に組み込だ怪人たちの姿であった。
――――――――――――――――――
※ストーリー補足
イベントクラン対抗戦・《集星よ、理想が先は闘争の向こうへ》の大まかなルールこんな感じ。
・予選で得た予選ポイントで本戦出場権を買った先着の6つのクランが決勝に進出し戦う。
・勝敗は各クランの総合貢献度という数値を元に割り出され、これは戦闘、生産ともに様々な行動で上昇する(どういう計算なのかはマスクデータで不明)。
・本戦は実時間ネット配信もされる予定で、反応が良かったシーンは編集してPVとかになる予定(映るプレイヤー側に拒否権はあり)
・ポイント獲得方法には勝利ポイント、連勝ボーナス、奪取ボーナスの3種獲得方法がある。
ー 勝利ポイントは試合に勝った時に貰える基本のポイント
ー 連勝ボーナスは勝利時に貰えるポイントを連勝数✕勝利ポイントにするもの。
ー 奪取ボーナスは拠点と呼ばれる各クランのリスポーン地点にあるコアというオブジェクトを破壊した時に貰えるものだ。
・本戦追加ルール
時間加速した仮想空間にて行い、3時間に圧縮されて3日2泊で行う(その間じゃんと睡眠を行わないとデバフを受ける)。
勝利ポイントは総合貢献度を参照して割り出され、リアルタイムで計上されていく。
奪取ボーナスは敵クランの拠点コアを落とした時に発生する。
連勝ボーナスは連続で敵クランの拠点コアを落とした時に発生する。
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