第9層 本戦編
第178話 本戦開始
―― イベントが始まった次の日、始まりの街。
《さぁ、今日も《イデアールタレント》をプレイしてくださる皆様、こんにちは! VR系アイドル星野ギラでーす!》
イベントの盛り上げがりに興奮冷めやらぬ街の上空にて、前日同様に可愛らしい舞台衣装を着こなした星野ギラが投影されていた。
《司会役として本日は本イベント、クラン対抗戦!《集星よ、理想が先は闘争の向こうへ》の現状をざっくりと振り返ることとしましょう!》
そういうと同時に運営がピックアップしたいくつかの対戦の映像が大空に展開される。
どれもこれも迫力満点な絵が抜擢されており、その中には敵を一刀両断するメルシアやプレイヤーの大軍を相手に無双していくモルダードなど、有名どころが目立って見せられていた。
ただ……片隅に映っている焦土の高原で高い笑いしてる魔法使いや、派手に拠点を消し飛ばしてる黒騎士の映像には皆が見て見ぬ振りしている様子はとても印象的だった。
《このように今や数百を超える数のクランたちが鎬を削って戦ったこのクラン対抗戦予選! 初手に波乱が広がり、それを起爆剤にするようにさらに加熱し、対戦可能時間が終わる深夜まで血で血を洗う激戦という紆余曲折ありながらも…………なんと早いことに、昨日時点で本戦に出場する6クランが決定いたしました!》
両手を広げて大袈裟な動作で叫ぶ司会の星野ギラ合わせ、ファンパーレとクラッカー音が鳴り響く。
《その中にはみんなが目を付けてたあのクランや、まさかあのクランが!? というクランから、今まで表には出なかったダークホースまで! よりどりみどりのラインナップとなっております! ではここで、成績を総合して判断した予選順位を元に第6位から本戦の出場クランをご紹介いたします!》
そういうや否や彼女の横の空間に『第6位』と描かれた文字がポップアップし、勢いよく回転する。
そして彼女の発表と共に順位の文字はクランの名前へ切り替わる。
《最初に第6位『天下独尊の剣』でございます! 昨日の予選時間、終盤辺りに本枠がひとつだけとなり行われた熾烈な争い中から這い上がってきた蠱毒の猛者た! その根性を本戦でも見せてくるのか!》
と、司会役として最大限気を使った表現をしているが、彼ら『天下独尊の剣』の評判は……あまり褒められたものではない。
リーダーが偶然強力なレア装備を手に入れて、それをきっかけに所謂成り上がったクランのひとつだが、とにかく鼻持ちならなず尊大な態度のものばかりの集まりだった。
今も彼らは明らか本戦に参入出来なかったクランを見下ろして、嫌なニヤつき顔に張り付けている。
《第5位は『怪人の
今回は惜しくもある一戦で大きく順位を落とし出場権を手入れるのも遅くなってしまったが、『怪人の
あんなにやられて黙っちゃいられねぇ、と。
《第4位は『陽火団』! クランマスターの威光の元、一糸乱れぬ連携でもって敵を下すその姿は正に正統にして王道! その隙のない戦略を遺憾なく発揮し、今回も活躍出来るのか!》
クラリス及び『陽火団』メンバーも順調に勝ち上がり、自分たちの名が浮かぶ空を見上げている。
整然と立ち並ぶ彼らも決然とした表情をしたまま、意識はある敵の顔を見据えていた。
《第3位は『
祭りどれほど盛り上がろうと、今モルダードが見詰めるはただ1匹、あの好敵手のみ。
約束通りに遥かに強くなって帰ってきた好敵手に不敵な笑みを浮かべいていた。
《第2位………なんとあの『Seeker's』だー! まさかここだけにあらず様々なVRゲームでもはや伝説となりつつある彼女らが、次鋒に甘んじることなるとは誰が想像したでしょうか! ですが本番はここから! 本戦では『Seeker's』ここにありと、そう示してくれるに違いないと、皆そう信じていることでしょう!》
他のクラン同様、司会の言葉を聞く『Seeker's』の4人は気負うことなく佇まいでいる。
ただ、今日まみえる敵だけを見据えて……。
《皆様お待ちかね第1位は…………本イベント突如現れた新星、『
奇しくも……この本戦出場クランが全員から何らかの理由で睨まれることとなったクラン『
彼はそのピリピリと伝わってくる敵意を望んでいたとばかりにただ受け止めて、毅然としたまま空を見上げていた。
《それでは皆様、予定の通り午後までは予選と同じランダムマッチングで対戦を楽しんで頂き、午後19時から行わる本戦はなんと、時間加速システムを使い3時間に圧縮された3日間に渡る長期戦となります!》
そこで一旦を区切り……。
《という訳でまだまだイベントは続きますということで……最後まで腑抜けてねぇで食らいついて食らいついて、ぶち殺していけ野郎どもォーッ!!》
乱暴な声援とともにイベント最後の時間が始まったのであった。
――――――――――――――――――
・追記
大変遅くなってしまい申し訳ありません。今日から更新再開したいと思います。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます