第155話 2度目のランクアップ
耐える、という一点に置いてやっぱりもっとも頼れるのは土属性だ。
戦闘用に考えるなら、俺が持つ他の属性が向いているがやっぱり純粋な守り関しては土属性が一番優れいる。
だが、俺が普通に防壁なり作っても、その程度だとワームにあっさりと噛み砕かれる。実際さっきのドームだって地面もちゃんと固めていたのに侵入されている。
それを鑑みた上でどうするかを考えて、考えて……やがて結論だ出た。
「あー……出たけど。これ上手くいくか?」
正直、一度もやったことのない試みなのでぶっつけ本番は不安しかないが……。
「ま、やるだけやってみますか。ファスト、策を思いついた暫く守ってくれ!」
「きゅー!」
変わらず地と一体となって這うスライド移動をしながら、地面に杖の石突きを擦って線を引く。
そのまま線を引きながら移動すると前方にスライムが湧いて立ちはだかる。俺は諸事情で進路を変えられないので、ここは。
「ファスト!」
「きゅ!」
俺が呼ぶとファストが前に躍り出て、進行の邪魔をさせないように一時的にスライムの体を抉り出すトンネルにする。
それからも何度かそれを繰り返すと、やがて地面に大きな円が描かれていく。ここまでくれば分かったと思うが、俺は今描いてるのは魔法陣だ。
素の魔法の腕だけで足りなければ魔法陣の力を借りればいい。と思ったのはいいが、残念ながら今の状況びったりの魔法陣を偶然持ち込んだりはしていない。
ならこの場で描けばいい、となったわけだ。
ただ今は測定士をセットしていなかった。普段は『測定』スキルに頼っているので、魔法陣を描くには相当集中しないといけない。
戦闘中に装備変えれたり、ポーションもボタン連打でがぶ飲み出来たりと、割と制限の緩い《イデアールタレント》だが、セットジョブは戦闘行動をした後暫くは変えられないようになっている。普通の転移アイテムとか一緒の仕様だ。
「よし、基本の円は描けた! 後は中身だ!」
魔法を陣に留める基本の円が完成して、次は効果を決める模様を描くのだが……ここがちょっと問題だ。
円は大回りであれ、その場を離れ続けていたが模様は形によって一箇所にそれなり滞在する。ただそれだとワームが地中から出てきて魔法陣が台無しだ。
「だから今度は、海でやったのと同じ要領で光の線を引く!」
これならワームにこわされることはないが……簡単なものとは言え魔法を2つも使いながら魔法陣を描くのは、マジで神経を使う。
正直、もう無駄口を叩く余裕もない。
「きゅ!」
だから、身の安全は今も地を突き破って来たワームを蹴り飛ばしてるファストに任せるしかなかった。
だが、ファストがすべての危険を排せるわけではない。
ファストがどうにか出来るのはモンスターまで。どうしても気まぐれに変わる暴風雨の風向に耐え、偶に近くに落ちる落雷に『リジェクトシールド』越しで肝を冷やすながら作業を進めなければならないからだ。
今やってるのが超単純な模様ひとつしか使ってないから何とかなってるものの……同じ状況では『フライ』どころか、割とパターンが単純な『スターリング』の魔法陣も描けそうにない。
やっぱ戦闘中にやることじゃないな、これ。
……と、様々な脅威に怯えながら魔法陣を描いて数分。
「や、やっと完成した……! ファストこっちに戻れ、籠もるぞ!」
「きゅう!」
まだモンスターを相手取っていたファストを呼び寄せ、魔法陣に魔法を送り込む。
魔法自体はさっき使ったのと同じ土のドームを作るものだ。
だが今回は魔法陣がすぐに効果を発揮し、重たい怪音を上げながら土のドームを圧縮する。足元の地面も含めてだ。
やがて限界まで圧縮されたのか、外の音すら届かないツルリと土のドームが俺たちを覆っていた。
「これで、やったかな?」
外から音がせず、見えことも出来ないせいか、思わずちょっとフラグっぽいセリフが出たがそのあと特にないも起こることはなく……。
『
『ランクが★★から★★★に上昇しました、おめでとうございます』
……そのアナウンスと同時に視界が転換し、あの湖近くの高台の上に移動していた。
どうやら無事、クエストはクリア出来たらしい。
「はぁ……最後は疲れたが。でも、これ俺もランク★3プレイヤーの仲間入りかー」
そして、現在ゲームのワールドマップ探索最前線は3rdステージ終盤辺り。
実質的にプレイヤーの今の最高ランクは★3ということだ。つまりはランクならトップ層とも並んだということでもある。
「さて。無事ランクも上がってジョブ枠も増えたことだし。次は装備人を得てから、
「きゅうー!」
清々しい程に澄み渡った湖に向かって俺たちは次の目標を改めて確認するのであった。
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