第140話 周回風景
3rdステージのとある海域。
俺はこの前に言っていた通りヘンダーたちが星獣の周回討伐をしてる現場に参加していた。
現在ここにいるのは俺、ファスト、ヘンダー、アガフェル、そしてアガフェルのファン集団が多数。
今までの周回はスキルの都合上アガフェルの時間が開いている日を実行日に据えて、ヨグかヘンダーが代わり番こで参加するスケジュールだったようだ。
3人とも周回にばっかかまけているほど暇ではないから、こういうスケジュールなったらしい。
「お、出てきて出てきた」
この中を代表してヘンダーが例の鱗を渦に投げ入れる。
すると、前にもあった振動の後に渦の収束が行われ、鱗が星獣へと変貌する。
ただそこで少し違和感を覚えた。
「なんか前に戦ったのより小さくない?」
「それが、あの媒介の渦に蓄積された力の量で星獣の規模がバラバラなるみたいでね。前より大きかったり小さかったりとまちまちだよ」
そういうことらしい。
前より小さいせいか、心做し威圧感も減ってるように感じる。
まあ、小さいつって言っても十分デカいがな。今でも民家程度なら余裕で潰せそうだ。
「よし、もうすぐ始まるね。構えて後輩くん! 加護の対処もしっかりお願い」
「おう、任せろ。ファストも頼むぞ」
「きゅ!」
そうやってお互い気合を入れていると、やがて鱗からの変貌を終えて、星獣ナテービルが形成される。
同時にボス戦のエリアも形成されこちらのレイドパーティーを包み込む。いよいよ戦闘開始だ。
「ファスト、『星獣化』のお披露目だ! 存分に暴れてこい!」
「きゅ……きゅうぅぅー!!」
今現在のファストの種族は進化4段目……混星蹴兎となっている。
これはナテービルから確定ドロップするあのアイテム……星喰らいの残滓を進化素材に用いると現れる進化先だ。
それにより、追加されたスキルが『星獣化』。その効果は――
「おー早い早い! まるでフォルのやつみたいだ!」
「きゅきゅう!」
星魔石をふんだんに使いまたナテービルからぶん取った加護をファストに付与し、前とは比べものにならない、その暴れっぷりを褒め称える。
そういう魚であるかように海面を駆け巡り、神速の蹴りお見舞いするファストの様子は誇張なしにあの時のフォルと遜色のないものだった。
―― 変身時の全能力強化と、受けている加護の強化。
『星獣化』を発動するとそれらの効果と共に白だった毛が真っ黒に染まり、目が怪しい光の尾を引くようになる。
控えめに言って超かっこいい。でも胸元にある三日月は明るい色だから寧ろ浮き出てて、それがアクセントなってるから可愛さも損なわれてはいない。パーフェクト!
「ファストちゃん結構強くなったみたいだね」
「まあな。でもあれはまだ下準備、だけどな」
「下準備? まだ何かあるの」
「それは……イベントまでのお楽しみってことで」
「えー! 後輩くんのケチ!」
俺の勿体ぶった言い方にヘンダーが文句を垂れるが……まだあれが成功すると決まったわけじゃないからな。
正直、言わないというより、今の段階じゃ何も言えないというのが正確だ。
「アガフェルのとこは……なんか凄いことになってる」
「ははは、初見だと面食らうよね。私はよく見てるから、もう慣れたよ」
強化されたことでナテービルを翻弄し、その巨体を次々と蹴り砕くファストの、思っていた以上の活躍のお陰で俺たちの方は相当余裕があった。
だからついつい、今回は白毛の猫耳と2本を猫しっぽを生やしたアガフェルと、そのファンたちが奮闘する場所に視線が行ってしまう。
その甲斐もあって今やファンはさらに増え、元のファンももっと彼女に熱狂するようになり……。
「皆さん、頑張ってくださいまし! 妾をさらに可愛くするために!!」
「流石はフェル姫、向上心の天井がないぜ」
「フェル姫、万歳!」
「次は是非犬っ娘スタイルを! 出来ればとたれ耳で」
「いやいや次は鳥系だろ、優雅な翼とか……絶対、姫に似合う!」
「はん、分かってねーな! フェル姫と言えば狐! 今はこそ九尾を目指すとこぞ!」
「ふふふ、皆さん争うことはありませんわ。だって……妾は皆さんとなら、そのすべての美と可愛さを手に入れると……そう、心より思っており故!」
「うおおおマジですか! フェル姫えぇー!」
「くぅ~! 俺たちのことをそこまで……! 一生ついて行きやす!!」
「ふぉー!! 姫がためなら、この、命を、捧げるぅぅー!」
……今やずっとこんな有り様であるらしい。
あの調子でもナテービルの部位ふたつを抑える仕事はちゃんと遂行してるのだから、恐れ入る。
「もうあれファンというか信者では?」
「似たようなもんだね。ま、本人たちは楽しいそうだしいいんじゃないかな」
「それもそう、か?」
ま、まあ俺は人のプレイヤースタイルにとやかくいう立場じゃないし、自分たちが楽しいならそれでいいとことで、うん。
そんなこんなでわちゃわちゃと星獣との約10分後……思いの他、容易く星獣を討伐ことが出来た。
「ふぅー……1体討伐完了! やっぱり後輩くんが加護奪うと楽だね。よし、このまま今日は落ちるまでどんどん行こう!」
「おう!」
「きゅう」
前回より遥かに大人数だったこと、こちらも
その後またアガフェルの『運技・再選』でのドロップ選定を行い
「さーて、後輩くんのお陰で随分と時短出来そうだし、このままガンガンドロップを取っていこう!」
「「おう!」」
「きゅ!」
それからも暫くは星獣の周回は続き……追加で数本の
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