第3部 集星激突

第7層 戦前編

第138話 プロローグ 狂宴への調べ


草花がそよ風に揺れ、日差しが降り注ぎ、青空がどこまでも広がる広い大自然の丘。


今回のイベントにためにも用意された別サーバーに用意さらた自然豊な広いエリア。


普段ならそこかしこで小鳥が囀り、蝶が花を愛でていたはず、涼しい風が草原を揺らしてそうな閑散としたそこは――


「うおおおー! 何なんだよあれー!!」

「くっそ、誰かあいつらを何とかしろよ!」

「ああ!? そんなこっちが……ぎゃああぁあ~!?」


―― 今や、爆音轟く地獄絵図へと変貌を遂げていた。


自然豊かだった丘や草原は今やクレーターと爆炎と誰のとも知れぬ残骸が彩り、見る影もなくぐちゃぐちゃなった有り様だ。


丘に集まっている彼らは恐怖に染まった顔で見上げるのは上空に悠然と佇む、この地獄の元凶たるひとり魔法使いの男性プレイヤー……俺、プレジャである。


「ほら、どうした。見てばかりないで早く掛かってこい。相手はたかだか貧弱な魔法使いひとりだぞ? それがわざわざ姿を晒しているというのに……ここには腰抜けしないのか?」

「こ、のっ!」


俺が放った、とてもやすい挑発に乗ってきた戦士ジョブらしきものが立ち上がる。


「っらぁぁああ!」


その戦士ジョブの男が勇敢に跳躍しながら切り込むも、こちらに刃は届かない。


俺が突き出した手の先に生じた光の障壁に阻まれた男は、直後に瞬いた閃光と共に大きく弾かれる。


その先に爆発的な質量が落ちて周りのもの諸共、勇敢で無謀な戦士は塵と化した。


「しッ!」


直後、何かのスキルで身を隠していたがため難を逃れた暗殺者系のプレイヤーが背後から飛び出し、この地獄を生み出し元凶を葬ろうと白刃を煌めかせる。


その狙いは違わず首へと伸び、確実に俺の命に届く軌跡を描く。


「無駄なことを」

「ッ!?」


だが、それを『ディテクト』であっさり見抜いた俺はまるで虫でも払うかの如く腕を振る……。


「が、ぁ……」


……するとそれだけで抵抗する暇もなく、何をされたのかも理解出来ないまま。暗殺者は真っ二つに胴体を切り裂かれては光の粒子へと化した。


「どうした、次はないのか? 悠長にしてると……ほら、時間切れだ」


大きな長杖を囲っていた『スターリング』の輪っかが瞬き、すぐさま閃光と爆音があっちこっちに飛び散る。

その破滅的な現象は遥か遠くにある彼らが拠点を包み込み、周辺のものは一切合切を更地へと変えていく。


「なっ、拠点が……!?」

「こんな一瞬で、あんなに!?」


周りにある数多なクランたちの拠点が『スターリング』の圧倒的な暴威により消失し、驚きで口をあんぐりと開るしかないプレイヤーたちだったが、それが収まる暇もなく次の絶望が襲いくる。


―― 遠目ながら、それはケモノの姿を取っているように見えた。


四足の動物には見えたが、犬とも狼とも、猫とも虎とも言えない不可解な造形をし、耳とも角とも取れる雄大な何かが頭から伸びいていた。


そのケモノがある遠い地にて、まだ残っていた他クラン拠点で要塞らしき建物に眩い何かが走ったかと思えば……その要塞はまるで巨人の剣にでも切られたかの如く寸断され、脆く崩れ落ちた。


それを認めるとケモノは興味を無くしたと言わんばかりに次の拠点に足を運び、途中に道を阻むプレイヤーたちを蹂躙していく。


「あははは! 我が半身も派手に暴れているみたいだな!」


そのような光景がそれから幾度となく繰り返されていき……。


「く、くそぉ!」

「あれといい、こいつといいっ……何なんだよ、いったい!」

「だめだ、こんなもう……」


……顔を絶望の色に染めて、地に膝を着き力なく項垂れるプレイヤーたち。


「ふははははぁー!」


それを嘲笑うかのように、見下すように。天高くに飛翔し、すべてを俯瞰している立ち位置にいる魔法使いの高笑いだけが、轟々と燃え盛る世界にやけに大きく響いていた――


―― はて、何故こんなことなっているのか?


それを語るには今から相当の時間を遡らねばならない……。


――――――――――――――――――

・追記


という訳で今日から連載再開です!

次回からは時間を遡り、イベント告知があった翌日となります。


なお、普段以上に短いのはプロローグだからってことでご勘弁をm(_ _)m。


だって、この内容でこれ以上書く文章が思いつかなかったんです。

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