第128話 14階層-1

ここからまた3人称視点です


そして今後の水中でのボイスチャットですが、通常の台詞枠を使います。執筆の余計な手間を省くためですのでどうかご容赦をくださいm(_ _)m。

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「……となってな、俺はあのあとにクラリスさんと合流してお前たちを探したわけだ」

「その節はご迷惑お掛けして、すみません」

「あまり気にするな、パーティーだしそんぐらい当たり前だ」

「そそ、過ぎたことあんまり気にしててもしょうがないわよ」

「何しれっとこっち側に混ざってんだ。お前はちっとは反省にしろ、このアホ!」

「なにをー! そこまでいうこよないじゃないの!」

「まあまあ~、カベウラくんもそう神経質ならずに。マシュロちゃんも反省してたから、ね」


д゚)カベウラたちパーティーがダンジョン側の策に嵌っての危機的状況を『陽火団』の助けで乗り切れた日から、また数日が過ぎた。

彼らはその時の会話の流れでまた、今度はストスも加えて『陽火団』とダンジョンを攻略するのはどうかと提案され、特に断る理由もなかったので提案を受けることになったのだ。


「12階層もマップが完成してると楽でいいわね。自分で歩かなくていいし、ギミックもアトラクションとして考えれば結構面白いしで!」

「クラリスさんのお陰で罠にも掛からないしな、主にお前が」

「それ言ったわね! こっちだってわざと掛かってる訳じゃないっての!」


「あの子たちいつ見ても仲いいわね~。ストスくんそう思うでしょ」

「は、はい」


いつものようにわちゃわちゃしてるカベウラたちを少し離れて見守っているクラリスがストスに微笑ましく尋ねる。辛うじて返事をしたストスは昨日今日で有名プレイヤーでもあるクラリスがまだ慣れないのかどこか緊張気味だ。


本日のパーティー構成はカベウラ、マシュロ、ストスの3名と『陽火団』のクラリス及び斥候と魔法使いの他2名となっていた。

一行の予定ではこのまま12、13階層と最短で突っ切り、14階層に着き様子を見るのを今日の目標に定めている。


それはカベウラたちが持つの入口までマップと『陽火団』が持つクランを総出の人海戦術で隅々まで探索をマップがあるからこそ出てきた案だった。


実際にそれは上手く行き、そう経たないうちに12階層はほぼ最短で突破され一行はすでに13階層に着いていた。


「ふふふ。これで、やーっと……その内ここの主に一泡吹かせられそうね~」

「ねね。ちょっとクラリスさんが怖いんだけど」

「あの人はあの人で、前のあのやられ方が腹に据えかねていたらしいからな……」

「あら、なにか言ったかしら?」

「「いえ、何も!」」


普段はおっとりとしたクラリスであるがこの時ばかりは何とも言えない威圧感を放っていた。


「負けたままってのいうのも、性に合わないのよね」


『陽水』を編み出した逸話しかり、クラリスは努力家であると同時に……その分だけ負けず嫌いでもある。

そんな彼女があんな一方的に敗北を押し付けられて、黙って引き下がれるか。断じて否。


「小手調べに……ここ、殲滅しちゃおっか♪」


クラリスのその言葉を合図に『陽火団』の魔法使いが水魔法で場を整え、斥候が広範囲にある敵の位置を正確に伝える。


その後、暫く情報を精査するようにクラリスが目を閉じ、開けたその瞬間。


『陽水』の口が、暴威を吐き出しながら共に開いた。


それは、前日もあった光の雨の再来。だが、今回のそれは前のものとは規模が桁違いだ。

光の雨は階層全体を覆い尽くさんばかりに拡散され、水の中を走り、壁を透過し、すべてモンスターを正確に射抜いて灰燼に帰す。


光の雨が収まった頃には透明な壁越しでも周りにモンスターが一切に見当たらず、あるのは死亡エフェクトの粒子のみ。


「さて、これで邪魔者も居なくなったことだし。悠々と行きましょうか」


「うわぁ……」

「なんか『陽水』が前見た時の何倍はデカいと思ったら……このためか」

「クラリスさん、余程フラストレーション溜まってのね……。まぁ分かるけど」


これが『陽火団』の本気かと、カベウラたちは震えながらもドン引きしていた。

心做しかクラリスさんの顔が少しだけスッキリして見えたのもそれを助長したかもしれない。


「みんな、ひそひそと何してるの? 置いてくよ~」

「あ、はい! すぐ行きます!」


寄り集まって動かないでいるカベウラたちが不審に思ったクラリスが声で再起動する。

そのまま本当にモンスターがほぼ無くなった階層を快適に進み、14階層への階段を降りた一行。


「ここが、14階層……」

「なんか、今とも雰囲気が違いますね」


複雑に入り組んだ通路と、重力場により海流があっちこっち発生いている14階層の構造はどっちかという12階層に似通っていた。

またあの面倒な迷路探索をするのかと、辟易としていた一行の前にそいつらは現れた。


「12階層と違って、こっちは普通にモンスターも来るのか」

「あ、こいつ。あの時のバリア張ってたイワシよ!」

「また球体になって……今回も中にモンスターが居ますね」


出没したモンスターは前回はマシュロとストスを苦しめた、あのイワシのモンスターと酷似していた。

それら前回同様、光魔法で構築された障壁を瞬時に築き、その内側に味方のモンスターを庇う。そして障壁が構築されると同時に内側のモンスターが味方のイワシを食べ溜め入っていた。


そうはさせまいとクラリスたちが障壁に向かって光線を放つ、が……。


「あら、前とは違うものみたいね。ただの力押しじゃ抜けそうにないわ」


前は何重も重ねてあった障壁をあっさりと貫通していた光線をいくら浴びせようと、今度の障壁は崩れる気配がない。

どうやら、ここのイワシどもが使う光の障壁は上の階層のとは性質からして違うもののようだ。


「厄介ね……」

「ここからは本気、ってとこか」


一行が輝く障壁包まれたベイトボールと対峙しながら、14階層での戦いが幕を開けた。

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