第123話 12階層ー4
Side とある重戦士
「作戦を確認する。まず俺、ストスとが飛び出しひと当てついでにローパーのヘイトを稼ぐ。そのあと後方で魔法を準備した相棒がローパーを軽くすればストスがやつを爆発で退かす、以上だ。さあ、行くぞ!」
「「了解!」」
作戦通りの俺とストスが飛び出し、ローパーに接近した。
俺は勢いそのままにシールドバッシュを仕掛け、こっちに注意がその隙きにストスが魔剣による水蒸気爆発を叩きつけた。
爆発に巻き込まれないように水の浮力も利用して大きくバックステップで下がる。
爆発が引き起こした大量の気泡が晴れて見えたローパーは……まったくの無傷。
「うわー、流石にあれでノーダメージは予想外ですね」
「いや、そうじゃないかもしれない」
「え? どういうことですか」
「さっきに近くだから見えたがやつの後ろ……防いでいる通路側にヒールスラッグという回復スキル持ちのモンスターが張り付ていた。あれで傷を瞬時に回復したんじゃないか?」
ヒールスラッグ、水辺のあるエリアならどこでも偶にポップし敵MOBを無差別に回復する厄介者だ。代わりに戦闘力は皆無で普通にどんな攻撃でも殴れば一発で死ぬぐらいには弱いが……。
そのヒールスラッグがローパーで塞がっている通路の壁が透けてそこにあるのが見えていた。
「嫌な位置にいるな」
「ですね」
ローパーの硬い胴体と破壊不能の壁の向こうで蠢く人の頭ほどはありそうなナメクジを見て顔をしかめる。
あれじゃヒールスラッグを先に仕留めるとかも出来ない。それに回復されるせいか、ローパーのヘイト値だって少し上げづらい。
「これはちょっとやそっとじゃこっちを見そうにないな。次は挑発系も混ぜてもう一度行くぞ! ストスは威力抑えめで連撃を頼む!」
「はい、分かりました!」
俺とストスで再突撃を仕掛ける。
今度はシールドバッシュの合間にローパーに挑発を掛け、ストスも振りの威力と立ち位置を調整して小爆発で連撃を繰り返す。
予想通り傷を回復し続けているローパーにそれらを暫く続きていると、ようやくローパーのヘイトが俺に向いた。
俺に向かってローパーの触手が撓り、それを盾で防いで下がる。
「よっと、やったこっちを向いたか。相棒!」
「待ってました! そーれ!」
かなり後ろで推移を見守って魔法を貯めていた相棒が星魔石を消費して魔法を行使する。
やがて相棒の手から星魔石が砕け、ローパーに軽量化の魔法が掛かった――
「ッ、避けてください!」
「なっ!?」
―― 瞬間、ローパーの身体がオーラの発した。
ストスがいち早くそれに気付き警告するがその時はすでに遅く、ローパーから広がったオーラは俺たち全員を瞬く間に包み込む。
次に間を置かずにしてローパーが全触手を使い透明な床をガァンと地鳴がするほどに打ち鳴らす。すると……。
「わあ!? 身体が、勝手に浮いて!……」
「重心が、全然取れません!?」
「なんだ、これは……!」
身体が僅かに浮き上がってから、まるで体勢が立て直せない。それどころか水の浮力にも徐々に押されている。
感覚はここの入口も入口……あの無重力空間に酷似してる。ということは、あの一瞬で俺たちの重さをゼロにされた? そんな馬鹿な……。
「これは……まさか。魔法の反射……いや、魔法でのカウンターか!?」
カウンター系統のスキルは攻撃したものに反撃して、より大ダメージを返す効果を持つ。
ただ普通は接近かつ物理に大して行われるもので魔法でそれが起きることはない。
少なくとも俺はそう思っていた。
これがただの反射なら、相棒が使った“ちょっと軽くする程度”の魔法が返ってくるだけのはず。
だがそれにしてはこれは威力が高過ぎる、相棒が持っていた星魔石と注いだMPからしても、いきなり重さゼロなる魔法が返ってくるのはあり得ない。
あくまで推測だが……。
でももし物理のカウンターみたく、自分が受けた魔法を転用して、さらに威力を上乗せまでして跳ね返すスキルがあるなら……この状況も頷ける。
「ぐっ、このままじゃ不味い! 何でもいい、どっかに掴めまれ!」
「そんなこと言っても取っ掛かりなんてどこにも……!」
「僕の手を……う、わああ!?」
「きゃああー!?」
状況を把握し、対処に乗り出すが敵もそれをのんびり待ってはくれない。
ストスが相棒の手を掴んだタイミングでローパーが伸縮自在の触手を網目状に繰り出し、俺たちがいる空間を薙ぎ払う。
俺はギリギリの範囲外にいたお陰で助かったが、ストスと相棒がそれに捕まり物凄い勢いで遠くに流される。
その先には通ってきたとは違う重力場の強制移動ギミックが口を開けて待っていた。
「ま……相棒、ストス!」
本当に不味い! このままじゃどこか遠くに押し流されて逸れてしまう!
慌てて重さのない足をバタつかせ必死にそれを追おとするが、その時はもう俺の方にも別の触手が迫ってきており……。
「この、くそが……!」
盾とスキルを全開にして、それを防ごうと足掻くも重さのない身体が踏ん張れるはずもなく。
俺の身体もあっさり弾き飛ばされた。みんなとはまるで別の方向の重力場に向かって……。
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