第113話 11階層ー1
Side とある重戦士
10階層、その先にある天井に煌めく海が切り取れている幻想的な空間の中……
「あははは! 何これ、ふわふわしてて面白いー!」
「あらあら、本当にふわふわと浮くわね。どうなってるのかしら?」
「またとんでもないのを作ったな……って、おいあまりはしゃぐな! 堕ちたらどうする!」
「やっふー! きっもちいいーっ!」
……うちの相棒が年甲斐もなく、はしゃぎ回っていた。それも空中を。
この部屋にいた魔法陣らしきものの上は無重力になっているようで、それを利用してあの上に行けってことなのだろう。
今は『陽火団』の斥候役の人が先行偵察に行ってる最中で……その暇を我慢出来ずに相棒が魔法陣に飛び込んで今の状態なわけだ。
「錐揉み回転からのー……ぴたっ! ふふ、完璧!」
今は普通に浮くだけは飽きたのか、風属性の魔法まで交えてやたらとアクロバットな空中芸を披露している。
それがまた無駄に上手いから余計に腹立つ。
「はぁー。まったく、あいつは……」
「まぁ、いいじゃない。元気なのはいいことよ」
「元気過ぎなんですよ、あれは」
「よーし、ここをまわ……って、あれ? おちぶきゃっ!?」
まったりと見守ってるクラリスさんとそんな会話をしているループ飛行にしようとして目測を誤った相棒が魔法陣の範囲から離脱し、そのまま顔から盛大に落下した。
結局そうなったか、言わんこっちゃない……。
「痛たぁ……くはないけど。なんか気持ち悪いぃ」
「調子に乗り過ぎだあほ、ここがセーフティエリアじゃなきゃ今ので死に戻ってたぞ」
「うぅ、ごめん……」
「はぁ……。ほら、手貸すから早く立て」
「うん、ありがとう……」
VR機器側のカットで痛みはなくても錯覚での不快感は抜けないのか、差し出せた手を素直に受け取る相棒を助け起こす。普段もこんだけ素直なら苦労もないんだが。
「あ、今は斥候から連絡来たよ。問題ないみたいだから、来てもいいって」
「と、なると……あそこを通るんですね」
「そうなるわね~」
「……私、今動くの無理だからおんぶして連れってて」
「お前は、本当にな……!」
言いながらここの天井……そこに重力を無視して張り付いている海を切り取ったとしか思えない水溜りを見上げる。
その天井には熱帯の海のようなサンゴ礁が広がっており、中央の一点には人が2、3人程同時に通れるそうな水中トンネルが開けられている。
クラリスさんと仕方なく相棒をおぶさった俺は、重力がなくなる魔法陣の上に乗り、そのトンネルを潜り抜ければ洞窟が出てきた。
そこを更に抜けるとここが孤島なのが分かり視界いっぱいの海が広がっている。
「うっはー! 凄い! 見てみてあのヤシの木! あ、あそこの虹もすっごい綺麗! 輪の中に魔法陣みたいのも描いてあるよ」
「おう……これは、マジですげーな」
「ほんとね~。まるで童話の中みたいよ」
洞窟出口で待機してたメンバーと合流した俺たちを出迎えたのは清々しいほどの大海原とその海上で圧巻の近さにて佇む、幾何学模様を内包する輪っか状の虹。
遠くに見える、その虹の魔法陣を囲む不思議な光を発する柱が水を吹き上げキラキラと辺りの空間を飾り立てているのも神秘な雰囲気を助長している。
「そこのアーチが海辺への入口みたいよ!」
「あ、本当だ。他のとこは柵があって通れないな」
上ばかりに気を取られて気付くのが遅れたが、この孤島は外周が石で出来た柵がに囲まれていてアーチの部分でしか出入りが出来ないようだ。
石の柵は相当高く、ジャンプだと越えられそうにない。余程特化しかスキルか、飛行が出来ないとこの柵を越えるのはまず無理だろう。
でも何のためにこんなものを……と、思いながら相棒とアーチを潜った瞬間。
唐突に周りが暗くなり、閃光と爆発音が鳴り響く。
「うわ?! なに、敵!?」
「いえ、あれは。花火……かしら?」
「文字になってます! えっと『ようこそ!』『エクステラビリンス』『星海域層へ!』」
どうもあのアーチを通るとそれを感知して打ち上がる仕組みなっていたらしい。俺が言ったが順番の文字列が花火として暗くなった空に描かれていた。
「手の込んだことを……」
「まぁ、いいじゃない。楽しそうで」
「あいつは気に入らないけど……私も派手なのは嫌いじゃわ!」
「お前はそうだと思ったよ……ん?」
思ったよりも派手な挨拶に全員で面食らっていると、暗くなったて空が晴れ視界が開ける。
その俺の目にはある奇妙なものが映っていた。海辺から先に……つまり海の上に四角いものが高速でこちらに接近している。
「何だあれ……?」
「何かあの……むむむ、ここじゃよく見えない」
「私に任せて……はい、魔法で望遠レンズを作ったわ」
「ありがとうクラリスさん! どれどれ……」
この一瞬で2属性を操る魔法を構築したのか。後ろに未だに『水陽』も維持してるままなのに。
やっぱり只者じゃないなと思いながら俺も相棒と一緒になって水のレンズを除く、するとそこには……。
「あ、あれは、宝箱よ!」
「宝箱が、海を横断してる!?」
「あらあら~」
こうして俺たちの『
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