第85話 戯れが爪痕
『
『ジョブ:大地術士が隠しジョブ:
『お望みであればいつでも通常マップに帰還可能です(5分後に強制帰還)』
これで本当にクエストは終了かな、と思っていたらそれに答えるように突然、システムアナウンスが響く。それによりここの別サーバーから帰るまで猶予があるらしい。
「最後に挨拶でもしろってことか……。それとまたHiddenにまったく知らないジョブ……いや、これは今はいいか」
そうか、もうお別れか。
エルのお家はどうも通常だと入れないみたいだし、会うのがまたいつになるか分からないな。もしかすると関連クエストがなくてもう会えないかもしれない。
そこで自然とエルの顔を見る。相変わらず生意気そうな可愛らしい顔だ。またいつかどっかで会えればいいんだけどなぁ。
「どうしたの?」
「俺は、もう帰る時間ぽくってな」
俺が顔をじっと見るのを不思議に思ったのかそう尋ねたエルにもう帰る時間だと告げる。すると彼女は少しだけ寂しい顔を覗かせては、すぐに引っ込めてこちらに笑いかける。
「……そっか。また、いつか会えるといいわね」
「そうだな……またいつかだ」
「きゅ!」
「ふふ、あなたもいつかまた。次はちょっとは撫でさせてよね」
「その時が来ればな」
「楽しみしてる!」
エルとはそれだけ交わして街を……いや、今や塔が倒れただけの荒れ地を見返す。
我ながら派手でやったもんだな、こりゃ。内情を知らずに見ると何かの天変地異でも起きたのかと思っちまいそうだ。
「あ、そうだ」
そこでふと、あること思い付き近くに露出していた大きな岩に近付きある模様と字を刻む。岩なら魔法で彫り作れるんでデカい範囲も楽々書けるから結構楽しいかも知れない。
つってもこの手のサーバーはインスタントが基本だからこの後消えると思うし別に意味なんぞ無いかも知れないが……まぁ、予行練習ってことでひとつ。
「これでよし! そんじゃ本当に帰るとしますか」
そして俺はこっちに手をふるエルに手をふり返しながら元のサーバー帰還していった。
◇ ◆ ◇
―― 帰還して行ったのだが……。
『《イデアールタレント》をプレイする皆様にお知らせです』
『本日、PN:プレジャ様により
『これによりそのクエストの影響が本サーバーの一部のマップにも反映されます』
『HiddenMissionに関する詳しい説明は只今よりヘルプの項目に自動で追加されましたのでご確認をお願いします』
……というワールドアナウンスがぶっ込まれた。
「…………は?」
「きゅ?」
それを聞いてリアルで放心状態になっていた俺の目に映る景色が揺れる。
一瞬戻っていた街並みが夢幻の如く掻き消え、クエストで荒らしたまっさらな荒れ地に変わる。
それを見てまた停止しそうなる思考を必死に繋ぎ止めて考える。今俺がするべき最適な行動を。それは……。
「うん、逃げるか!」
「きゅう!」
だってこれバレたら絶対に大騒ぎになるやつじゃん。
それ自体は別にいいんだけどここで誰かに捕まれば絶対に面倒くさいことになる。とういうわけで。
「すたこらサッサ、とな!」
「きゅ」
俺とファストその場で転移アイテムを使用して登録していたセーフティエリア……我がホームであるダンジョンへと帰還した。
―― 一方、プレジャが残していった荒れ地にわけも分からず魔法の街サウスワン(跡地)に取り残されたプレイヤーたちはというと。
「何がどうなってんだ!?」
「HiddenMissionってなんだ? 知ってるやついるか」
「そんなことよりギルドどこいった、俺とクエスト報告中だったんだけど」
「またプレジャかよ。どんだけ騒ぎを起こせば気が済むんだ!」
「ここどこー?」
……完全に混乱の坩堝に嵌っていた。
突然のワールドアナウンスにHiddenMissionの情報、それにサウスワンの変容。
あまりに一気に色んなことが起こりすぎているのだから無理もない。
それを鎮静化させようとする少数のプレイヤーも居るには居たが、周りを気ままに調査したり、外部サイトに書き込んだり、今の現象について考察して騒いだり……おおよそ場が纏まる要素は皆無と言えた。
「これは暫くおちつきそうにねーな」
「そうだな……一旦ここを離れて、ん? 何だあれ」
やがて鎮静化を促していたプレイヤーたちも諦めてここを離れようとしていた、その中のひとりがあるとこに人集り出来ていることに気付く。
最後の最後に野次馬根性が出てしまった彼らはその場に向かい近くにいるものここに何かあるのかと尋ねる。
「ああ、何かあそこの岩に妙なエンブレム? みたいなのが刻んであるってよ」
「エンブレム? 直接見に行ってもいいか?」
「別にいいと思うぞ、大抵連中はもうスクショとか撮ってるし。頼めば道開けてくれると思う」
「そうか。おーいちょっと退いてくれ」
人波をかき分けそう経たずにその中心にある岩に辿り着く。岩に大きく露出して高く聳えており、その壁面に例のエンブレムとやらが刻んであった。
「これは……道化の顔の絵、かな?」
「こっちに文字も添えてあるぞ」
「本当か、どれどれ……」
彼らが壁面の絵に顔を近づけて見てみるとそこには……
「LOKI……」
……という一文だけが大きく、そして荒々しく刻まれているのであった。
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・追記
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名前:プレジャー ランク:★★
セットジョブ
測定士LV10☆:『測定』
*装備
上衣:遮風の外套
下衣:根下の袴
武器:――
装飾:大地の琥珀輪
装飾:速魔の首飾り(魔法構築速度UP:元々やる予定したクエストの時短のために持ってきたPKドロップ)
所有ジョブ(残り枠0)
従魔(眷族3/3)
ファスト・混合蹴兎LV40☆
クイーン・鬼子母兎LV50☆
ペスト・
1F《上層》グループ・TN600
2F《下層》グループ・TN600
_____________________
クエストの話が思ったより長くなったのでここで第4層は一区切りさせていただきます。
次の層、新域編は掲示板回を挟んでから更新する予定です!
その時もどうぞ、読者の皆さんにはよろしくお願いいたしますm(_ _)m。
※こちら昨日上げた短編です、良かったら覗いてってください。
プラットフォームゲームみたいな世界になるとどうなるのか?
https://kakuyomu.jp/works/16816700428031070661
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