第34話 混合蹴兎


「中々の強敵だったな。どれどれ戦利品は、っと」


薬中熊との戦いを制したあと。俺はメニューを開きドロップのログを読んでいた。


「あ、混合熊カクテルベアって名前なのね。しかもこいつエリートモンスターじゃん」


上のエリートモンスター出現階層が確かに5~9に15~19だから法則的には確かに出る階層だけど。本来レアエンカウントなはずのエリートモンスターを1日に2回も遭遇するとか運がいいのか悪いのか。


「肝心のドロップ……爪とか毛皮はともかく混合熊の貯蔵袋ってのはなんだ?」


詳細テキストを読んでみると体内に入った多種多様な物質を液状に保管しては好きな時に霧状にして出すことの出来る器官らしい。あの調薬ブレスはこれを使って行われたものだったのだろう。実体化して見ると様々な液体を別保管するためか葡萄状に小さな袋が密集している形をしていた。

中々興味深い素材だな。『錬金術』でも応用効きそうなあたりが特に。でも今はそれより。


「これでファストの進化先が増えたかどうか」


もう時間も遅い。もしこれでだめだったら今日は諦めて明日またもっと下を探索することになる。出来ればそれは勘弁したいからどうにかこれが当たりでありますように。

そうやって祈り、ここまでにかなり増えた雑多な進化先のスクロールしていくと。


「…………あった」


見たこともない、貯蔵袋系のアイテムを消費してなる進化先がひとつだけ。


混合蹴兎


多分さっきの調薬ブレスが使えるようになる種族だろう。それだけでも結構な強化だ。だがこの混合蹴兎の利点はそれだけではない。


「俺も一応、『錬金術』で調薬が出来る。とういか素材の上位化なども」


強力な毒や薬などを俺が作りファストに与える。それだけでファストの戦闘の幅は飛躍的に広がる。

なによりこれなら……俺とファストは常に一緒に強くなれるかも知れない。


「これ以上ない程の最上の結果だ。で、ファストはどうしたい? 混合蹴兎に進化したいか」

「きゅ!」


もしやと思いファストの意思も確認してみたが力強く頷かれた。どうやら問題ないようだ。

ならば善は急げだ。ファストを混合蹴兎に進化させる。ファストの体が一瞬だけ光り輝きすぐ収まる。そのあと出てきたファストの見た目は2度目の進化同様大した変化はないように見えたが……よく見ると少しだけ変わっている。

通常より足が太い白兎なのはそのままだが、ふさふさの胸毛に三日月の模様が出来ている。まさかと思うがこれは熊要素のつもりなのだろうか。いやでも横に倒れてないし普通の三日月だし違うか。というかそもそもあいつツキノワグマだったっけ?


「……ま、細かいことはいいか。可愛いし」

「きゅ?」


その状態で胸元上げて首を傾げるんじゃない、思わずスクショ連写してしまったじゃねーか。ってそうじゃない、混合蹴兎の検証からしないと。


「まず増えたスキルは『肺合』か。効果は、まぁさっき見たまんまだな」


なるほど配合にかけてるのね。となると、あの貯蔵袋が肺ってことになるのか。毒性の液体が貯まりまくった肺って……なんかそう考えるとちょっと嫌だな。


「ファスト『肺合』を使ってもらえるか」

「きゅー……」

「使えない? ああ、出来たばかりだからそりゃそうか」


『肺合』は貯蔵袋が空だと当然使えない。ならまず何かを補充しないと。あの薬中熊は多分この階層の毒を液状に溜めて使っていたがいきなり毒を食わせるのもな。


「……ポーションでもよかったりしない」

「きゅぷきゅぷ」

「いけるのかよ」


貯蔵袋のテキスト的に行けるかなとポーションを実体化して渡してみたがこれでもいいらしくきゅぷきゅぷと飲み始めるファスト。そのまま自分の頭くらいの瓶を飲み干しかと思いきやポーションと同じ色合いの霧を口から吐き出す。


「おお、成功か! しかもこれ普通に回復するぞ」


効果量は格段に落ちるみたいだがこれならファスト単身で範囲回復が出来る。今の状態だとそれでも回復量は微妙だがそれはこれから俺が頑張って『錬金術』を鍛えれば済む問題でしかない。


それに回復もそうだが毒も同じことが出来る。あの熊がそっちの使い方をしていたらもっと苦戦してたかもしれない。


なんにせよ一対多か多対多が主なダンジョンでは非常に有用なスキルなのは間違いない。と考察をしているとどこからかむしゃむしゃと何かを毟る音が。


「って、おい! ファストそれどう見ても毒キノコ!!」


すると思って見てみたらファストがベニテングタケ並みに真っ赤などう見繕っても毒キノコにしか見えないぶつを食べいた。


「平気か! 毒には……なっていない?」


ただのキノコだったかと思いベニテングタケもどきを採取してアイテムで鑑定して見ると普通に毒キノコだった。それも『測定』で測ってみるとかなり毒性が強くファストのHPでは1分も持たず死ぬレベル。


「これはもしやそういうことなのか」


貯蔵袋は体内に入った物質を液状にして保管……または隔離出来る器官とも言える。それは結果だけ見るとどんな毒でもここに貯めれさえすれば無効化出来るということ。

薬を溜めて耐久力をあげ、毒を溜めて耐性を上げる。ファストに最も足りなかった防御面での隙きを埋めて使い方によっては今までのスタイルを強化することも出来るときた。


「想像以上に有能だな、混合蹴兎。これは本当に行けるかも知れない。この子を最強にすることが……!」


俺はついにこの日ファスト最強育成のその第一歩を踏み出した。


_____________________

名前:プレジャー ランク:★★


セットジョブ

大地術士LV10☆:『魔法・大地』

魔統帥ロードLV16:『調教術』『将化』

測定士LV3:『測定』



*装備

上衣:増魔のローブ

下衣:増魔のサルエル

武器:地脈の長杖

装飾:親愛の証

装飾:地属の琥珀輪


所有ジョブ(残り枠0)

大地術士☆ 魔統帥ロード  鏡面士 盗賊 錬金術師 測定士


従魔(眷族2/2)

ファスト・混合蹴兎LV30

クイーン・女王兎LV30☆

1Fグループ・TN300

ボールグループ・TN100

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