第18話 襲来
翌日、ダンジョン奥の一室。
「神経をここに……やば、伸びすぎた千切れる! なら筋肉を……げ、皮膚がボコボコといってる!?」
意気込んでボス創りを始めたものの当然のように難航していた。
まぁ、いきなりオリジナルレシピなんて高難度なことから初めてから当たり前だ。一応素材数に物言わせて錬金術師のレベルはカンストしたんだけどな、足りないか。
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名前:プレジャー ランク:★
セットジョブ
*装備
上衣:増魔のローブ
下衣:増魔のサルエル
武器:地脈の長杖
装飾:親愛の証
装飾:地属の琥珀輪
所有ジョブ(残り枠0)
大地術士☆
従魔(眷族2/2)
ファスト・蹴兎LV30☆
クイーン・女王兎LV30☆
1Fグループ・TN300
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※生産者→合生産者→錬金術師(前提:魔法使い、合生産者の所有経験あり
素材のモンスターを呼ぶためにセットしてたから何気に魔統帥(ロード)のレベルも上がってるな。まぁ、今もダンジョンの侵入者を仕留めたりしてるし当然か。
「ぐむぅ……あ、また細胞が壊死してるぅ」
癒着剤の量を1グラムでもミスればすぐこうだ。これのせいで何体謎のクリチャーが出来上がったことか。ぐぬぬ。
ダンジョンはなんだかんだと順調で階層も当面の目標だった5階層まで完成している。ここから階層をもっと増やすかは状況を見ながらになる。それには階層ばかり増やしても管理が煩雑になるとか、そもそもまだそこまで人が来そうにないとかの理由もあるが……。
「まず5層にボスを置いてからじゃないと。いつまでもボス不在だとダンジョンとして格好がつかないし」
予定としては6階層からダンジョンの様相をガラッと変えるつもりだ。そこの守護者ポジとしてのボスを先に置きたい。どんなボスにするかイメージは固まってるんだけどな、これが中々形にならない。最大の障害はやっぱり魔法属性の適正だ。
俺は大地術士を取るために土以外の属性の適正を犠牲にした。そのせいで本来無属性の魔力があれば簡単に出来る細かい錬金術の作業を代用品を用いて行っている。さっき使った癒着剤ってのもそのひとつだ。お陰で費用は嵩むは手間は増えるはで踏んだり蹴ったりだ。逆に土属性の魔力を使うとこはめちゃめちゃスムーズなんだけどな、他の部位も出来なきゃどうせ失敗するのであんまり意味がない。キメラってのはそう単純に出来てないらしい。
「オリジナルレシピだから所々店売りので代用が効かないのもザラでなおつらい」
生産・合スキルの補正もあるし必要な薬剤類の調合は出来る。俺の腕が足りないのか品質がいいとはお世辞にも言えないけど。古き良き混ぜてボタン押してはい出来上がり方式だったらこんな苦労しないのに……制作過程で無駄にPS要求しやがって。おのれ運営。
「ま、結局自分で頑張るしかないか」
ここでキメラ制作の過程を少し話して置こう。
まず第一に素体となるモンスターを生贄に捧げ、そいつをベースに必要な部位を素材から選定する。それが済めばあとは各パーツを繋げたい部分に繋げて完成って流れだ。でも素体と適合するなら素材の方は何でもいいが素体とかけ離れたモノほどキメラ作成の難易度が上がる。
一応俺は生物系かつ同種の素材で揃えて難易度を下げてはいるがそれでも中々上手くいかないのが現状だ。
その繋げる作業は属性の制限される俺には至難の業だ。
神経をピンセットで整え、薬を掛け、定着させる。
筋繊維を培養液で増やし望む形に整える。
違う個体の細胞を癒着剤で結合させる。
これら全てを魔力を使わず手作業でこなさねばならない。魔力があればお描き感覚で神経を書き入れられるし筋肉なんかもイメージ通りに盛れる。そして問題はそれ以外にもある。
「うーん、やっぱり属性が必ず土になるな」
目の前のキメラ(完成度イマイチ)を見ながら呟く。ちなみにキメラの完成度は寿命ってものがあってこれの日数が長いほど完成度が高いってことになる。実際寿命が長いほど活発で肉体的にも強い個体になる。
モンスターには全てマスクデータとして属性がある。キメラの属性は使った素材や作成者の適正などで変わる訳だが……大地術士で土属性の適正が増大してる俺が創るキメラは今のとこ全て土属性になるみたいだ。なんの属性かは属性ごとに存在する威力が同じ属性攻撃アイテムを当てることで確認した。これももっと上位の素材を使えば作成者の影響を撥ね退けると聞いたが今の俺にはそんな素材は調達出来ない。
別に土属性だからって悪いわけでも無いんだが、属性が偏ると攻略が簡単になるからな。このゲームの属性有利はかなり大きので弱点属性を突かれると高レベルモンスターが結構あっさり死んだりもする。今すぐはいいとしていずれか対策を考えないと。
あーそれとファストとクイーンの進化先もそろそろ決めないと。昨日ぐらいからレベルは足りてたけどどの進化先もこうしっくり来ないんだよなぁ。
「いや、そんなことより次のキメラだ。段々とコツも掴んできたし今度こそ完成させてやら」
「きゅう!」
「どわ!? どうしたファストいきなり」
俺が再び制作に再び取り掛かろうとしたその時に突然ファストが鳴きながら飛びかかってきた。というかファストはもう復活も出来るってことで確かダンジョンで他の兎に紛れてプレイヤーを狩っていたはず、なんでここにいるんだ?
「お前なんで……え、まさか死に戻ったのか!」
「きゅう~……」
能力低下のデスペナを受けたファストのステータスを見て思わず叫んでしまった。
おいおい、嘘だろ……ファストには魔統帥(ロード)のスキル『将化』をかけて強化していたはずだぞ。
『将化』は俺の従魔の数に応じて『将化』した個体のあらゆる能力値を最大2倍まで強化してAIレベルまで上げてくれる。派生時に得た従魔数に応じた強化(最大1.5倍)も新しくなった『調教術』にちゃんと内包されている。だから総合的な能力値が3.5倍は強化されているファストがあっさりとやられたことになる。
契約で復活に可能した個体はドロップを落とさないことが救いか。システム的に特になにかある訳ではないがファストの素材とかが持ちこんでくるやつがいるのは……なんか嫌だし。
状況を把握するために直前までファストがいたと思われる場所に監視映像を繋ぐ。そこにはひとり何故かダンジョン内で裸装備しかない筋骨隆々な大男がいた。不思議に思いながら映像を拡大し顔を確認するため覗きこむ。
「いったいどいつが……げっ、こいつは」
―― 今日、この男によりこのダンジョンに激震が走る。
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