第16話 天賦クエスト
「貴方さまが上げられし旗、しかとお見受けしました。我が魔物使いギルドは貴方さまを魔を統べしモノ――
『転職(タレント)クエスト・2nd《我らが魔の旗》をクリアしました』
『ジョブ:契・郡魔物使いがジョブ:
「うし、無事クエスト完了と」
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名前:プレジャー ランク:★
セットジョブ
大地術士LV10☆:『魔法・大地』
*装備
上衣:増魔のローブ
下衣:増魔のサルエル
武器:地脈の長杖
装飾:親愛の証
装飾:地属の琥珀
所有ジョブ(残り枠1)
大地術士☆
従魔(眷族2/2)
ファスト・蹴兎LV29☆
クイーン・女王兎LV24☆
1Fグループ・TN268
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※契・群魔物使いの『調教・契・群』→『調教術』に変化。
※従魔の☆は眷族の証。眷族に出来る総数はランクとジョブによって変動する。
ファストのレベルもしっかり上がってるな。ダンジョン出発前に1Fグループの経験値配分を0にした甲斐があった。いや~、ダンジョンで養殖する時にはいいけど通常時に300体に分散はキツイからほんと助かる。
「これでランクアップクエストまで上手くいってたらバッチリだったんだけど」
ステータスの上の方にあるこのランク:★表示。これがジョブではないプレイヤー自体のレベル代わりでこれが高いほどジョブは強化される。例えば補正値上がるとか『擬態』の適用可能数が増えるとかそんな感じだ。それだけでなく所有ジョブとセットジョブの枠も上げるたびにひとつずつ増える。
でも難しい過ぎなんだよな、あれ。クエスト場所も街の中で内容は定型的な己に打ち勝て! みたいな自キャラのミラアバターとの戦闘なんだがこれが強いのなんの。AI操縦だからフィジカルはあっちが上、魔法などスキル運用もあっちが上ときてるから打つ手がない。従魔を連れていってもあっち側も同じ構成を同数呼ぶから下手したらこっちが不利になる始末。
ダンジョンを作るようになって以来、わざと時間を割いてまで毎日挑戦してるがクリアの糸口さえ見えてこない。廃人やPS高い勢はもうクリアしたやつもちょくちょくいるらしいが凡人の俺には荷が重いよ……。
「無い物ねだりはいいとして。あとはあのクエスト、だよな」
街なかを進むにあたってファスト以外の従魔はダンジョンにて待機させているが、もとからぞろぞろと連れたっていけない場所なのでそのまま目的地に足を向ける。
まさかこんな早期に挑むことなるとは。本来なら持ってるジョブを限界まで鍛えてくる予定だったんだけど。でも俺の理想に最も近いボスモンスターを作りにはあのジョブ……錬金術師(アルケミスト)が絶対にいる。
そしてそれを得るには初期ジョブの生産者を得なければならない。
現在の場所はワールドマップの中央、最初の街にある地下の隠し部屋。プレイヤーがまっ先に訪れる広場の噴水を潜っていくと隠し扉あってこそから入ること出来る。そこには道削ぎの祭壇よりも大きな祭壇がありその背後に3つの神像が荘厳に佇んでいた。
天高く剣をかざす筋肉隆々な男の神像が闘争神グラディオ
左手に分厚い本と右手に長い杖を持った老人の神像が叡智神オウルディア
何も持ってはおらず、だが誰よりも堂々と精巧な手を胸前に突き出している女神像が創造神マルデイアス
『ここは聖域!』
『我ら才の神を安らぐ神殿である』
『人の子よ、何故ここに足を踏み入れたのですか』
システム音のように頭に、だがそれよりずっと感情が乗っている厳か声が響く。流石重要NPCとの初会話シーンなだけあって力入れてるなと感心しながらも用件を告げる。
「は、恐れ多きながら創造神さまに願いがござまして」
『申してみなさい』
「創造の才をこの地に授けたあなたに生産者を賜りたく」
『我らが授けし最も尊き才能……天賦を複数欲するなど、何たる不敬!』
『なんと愚かで貪欲な人間じゃ。地上の者共には過ぎたる力は身を滅ぼすとあれほど戒めたというに』
『……最後に一度だけ訂正の機会を与えましょう。本当に生産者の才を願うつもりですか?』
《イデアールタレント》で初めて就けるジョブ戦士、魔法使い、生産者は世界観上、特別なジョブだ。実際このジョブ群からの進化系は皆強力なジョブになり易い。ちなみにこれら3つの天賦の系統はメインジョブとも呼ばれ、それ以外の系統はサブジョブと呼ばれる。というかプレイヤー間ではこっちが主流だ。
そして天賦はこの世界の者たちすべてに必ずひとつは神から授けられるとされプレイヤーもそれに含まれているという訳だ。
それ故恩恵に感謝し自身の天賦を育むのならいいが、もし欲をかいて他の天賦を望めば神に対する不敬と見做されるとのこと。
闘、叡、創の神がそれぞれ言い終わると俺の視界に『
その内容はもし本クエストに失敗した場合その時点から24時間あらゆるジョブ関連施設の利用不可というもの。通常何をするにもジョブギルドを経由すること多いからゲーム進行上これは相当痛い……が、ここまで来てリスクなど知ったことか。自分からレールを飛び出した以上どことん好きにやってやる、それだけだ。
「訂正はいたしません。端から不躾は承知の上、どうか聞き届け下さいませんか」
『いいでしょう。そこまで言うのでしたら、あなたが私の才を授かり相応しいか証明してみなさい』
『天賦(ギフト)クエスト《天災と天才の間にて》を受注しました』
クエスト受諾が告げられた直後、薄暗い神殿の景色が揺れ、崩れ去る。かと思えば空白と化した空間が別のものに再構築されひとつの広大な部屋を形作っていく。
激変のあと現れたのは工房。それもただの工房ではない。この世(ゲーム)のあらゆる素材、道具、施設がきっちりと詰まった正しく神の工房。ここは実力あるものならそれこそ何でも作れる物作りとっての楽園。
そのような場所に俺たちと創造神と明らかに場違いなモブ顔のNPCがだけ残っていた。
『私から試練はひとつ。この工房の全て投じても構わない。その代わりにこの凡庸なる人の子に私の創り出したダンジョンを攻略させること、それだけです』
「……仰せのままに創造神さま」
天賦クエスト《天災と天才の間にて》は簡単言うと彼女言う通りただNPCにダンジョンを攻略させるだけのクエストだ。
だがこのNPCがまた曲者でとにかく特徴がない。能力値すべて均一でジョブがひとつしかないプレイヤーアバターと一緒。要するに本人に能力などの無いに等しく攻略はこっちが作った制作物頼りになる。
で、ここからが最大の問題なのだが。そもそもこのゲームは生産用のスキルがなくても生産が出来のか? 答えて一応はイエスだ。が、当然ながら生産のハードルは跳ね上がる。
普通スキルの補正なしだと高レベル素材は変形出来ないのだ。例えば鉱石がちっとも溶けない、革が断ち切れないなど現象が発生する。鉱石とか大地の一部みたいな大地術士で成形できるんじゃね、と思うかもだが“とあるジョブを除いて”魔法での生産素材加工は行えない仕様となっている。
「まずお試しに銅の剣を作ってみようか」
「きゅう」
ファストが興味深く見てくる中、システム案内に従い作成難度が一番低い銅の剣を作る。
《イデアールタレント》の生産は基本、作りたいアイテム種を選び、そこで目的のレシピを選ぶと作る動作は誘導線が出たり、成形は大まかホログラムの型が生成されたりする方式だ。誘導線なら正確な動作をすれば、型ならそこから大きくはみ出たりしなければ割と自由にカスタマイズ出来る。
ただそんなシステムサポートがあっても初手の結果は散々なものでやたら耐久が低かったり形が歪だったりで酷い有様だった。
「うーん、これはだめだな。ここだと素材は無限あるしせめて使えそうなのが出来るまでひたすら練習するとすっか」
幸いこのクエストに時間制限はない。工房はログアウトも出来るセーフティエリア判定だし放棄しなければ連日でここに籠もって作業することも出来る。
まぁもう後発増産のソフトを買った第2陣の参入が近いからそんな時間かけられないけど。早くクリアして明日にはダンジョンを整備しないと第2陣が来た時に間違いなく収容人数がパンクする。
そうして延々と100本以上の剣を作って数時間。形だけならやっとまともに見れるものが作れるようになってきた。これも生産者の作成スキルがあればひとつでも作れば後は一括作成とか出来るんだがな。もっと欲を言えば防具も作りたいしもうちょっと耐久も上げたいけど他の作業を考えるとそんな余裕はない。
「あとは投げナイフとHP、MPポーション作りの練習。それと仕上げにボス戦用の決戦兵器の準備だな」
俺が考えているこの決戦兵器―― これが実現出来るかどうかで今クエストの成否が決まると言ってもいい。とは言ってもまずは下準備だ。生産に出来るだけ慣れてからしたいからね。
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