第4話 『地底の魔宮』-1
初のPKのあと。獲得した戦利品を確認していると夜の時間なったのか空が暗くなる。夜はモンスターの出現が変動して強くなるのでさっさと林を後にして街中へ駆け込む。
「ふう~。何とかなったか。お、クエストも完了してるぞ!やったなファスト」
「きゅう」
そう伝えるとファストが何となく誇らしげにしてる気がする。気のせいなんだろうけど可愛いからなでなでしといた。
やはりというかプレイヤーの方が獲得経験値が多い。今はあまり目立ったら危ない(主にファストが)のでしばらくPKは控えるけども。
「今日はクエストクリアすると落ちるか。ファストもお疲れ様」
「きゅう」
まぁ、この子は最後以外は抱っこされてただけだけどな。モフモフが癒やしになってるのでいいのだ、別に。
「なるほど、立派に育てているようですね。試験は合格です。おめでとうございます!」
「ありがとうございます」
「これであなたも晴れてテイマーの第一歩である魔物使いです。これからも精進してください」
「やったぜ!」
「それとこれを」
と、ここでクエスト完了だと思っていただが受付嬢NPCから何か差し出される。
「これは?」
「私の見立てではあなたの従魔はとても大事されているように感じました。そういう人が魔物使いなった際には前途を祝す意味を込めてこれを授ける決まりなっているのです。どうぞお受け取りを」
「え?は、はい」
『
『ジョブ:魔物使いを獲得しました』
『《隠し条件:従魔との親密度10以上》を満たしているため追加報酬が支払われしました』
おお、マジか! こんな話にβ版情報にはなかったぞ。もしかして正式版からの追加要素か。でもなんで親密度がこんなに? あ、もしかしてずっと抱っこしてたから。
「なんにしろラッキー! で、肝心の報酬は……お、結構いいものだな」
装飾カテゴリーの装備『親愛の証』。効果は魔物使いのスキル調教の成功率を極僅か上げるとなっている。あのクエストを考えると今の時期に貰えたのはかなりの僥倖だ。ちなみに後日分かったのだがこれ自体はギルドで買える。ただしギルドの信頼度と結構なゴールドがいるんだそうだ。
ってな訳で早速『親愛の証』を装備! あとついでに防魔のローブ(PK時のドロップ品)も装備だ。
この日は達成感と疲労でぐっすりと寝れたのだった。
_____________________
名前:プレジャー ランク:★
セットジョブ
魔法使いLV10☆:『魔法』
魔物使いLV3:『調教』
*装備
上衣:防魔のローブ
下衣:ただのズボン
武器:枝の杖
装飾:親愛の証
装飾:――
所有ジョブ(残り枠3)
魔法使い☆ 魔物使い
従魔
ファスト・ラビットLV5
_____________________
あとがき
魔物使い:調教スキルが使える、従魔の数制限が解かれる。通常は5匹が限度。
◇ ◆ ◇
そして次の日。
「今度は魔法ギルドだ。行くぞファスト」
「きゅう」
魔王ビルドを実践するため俺は今日も忙しい。特に今日のは時間が掛かるからわざわざ夜明けに起きて最速でログインしてきた。ガチ廃人だったら夜ふかしが基本だろうが俺はしがない一般プレイヤー、あんなほんとに同じ生物なの? ってなる者たちのマネは無理だ。俺はちゃんと睡眠欲満たしながら生きたいんだよ。
今日は魔法使いのレベルがカンストすると受けれる派生転職クエストを受けるにためにこの魔法ギルドにやってきた。見た目はそれっぽいものがあるだけで他とそう変わらない魔法ギルドだがひとつだけ名物がある。
「このダンジョンの調査依頼を受けたいのですが」
「おお、大いなる大地の迷宮、『地底の魔宮』の調査か……ふむ、汝の実力なら問題なかろ、思う存分大地の偉大な魔を探求するがいい!」
『
魔法ギルドの受付の白ひげ爺さんがやたら大仰にポーズを決めながらクエストをくれる。ザ・魔法使いな真っ白な長髭を蓄えた爺さんがやたらテンション高く厨二セリフで芝居してるのが割に受けるてんだよな、ここ。しかも名前、『エターナ・ルイルネス』ってなんだ絶対狙ってるだろこれ。
「着いた、『地底の魔宮』。お前連れて初心者向け以降のエリア進むのは肝が冷える」
「きゅう?」
ファストをワンパン出来るモンスターたちを掻い潜ってどうにかここまで着いた。
だというのにこやつは涼しい顔しおって……でも首傾げ仕草が可愛いから許す!
ファストと一緒に『地底の魔宮』に踏み入れる。視界端のマップ表示も切り替わりここがダンジョンという別サーバーなのだと知らせてくれる。
内装はオーソドックスな洞窟型のダンジョンでそれなりに広い。薄暗いがゲームのダンジョンの仕様上、見えないほどでもないので問題はないだろう。
「丁度いいしここでファストのレベル上げもしようか」
1,2階層までなら俺がフォローすれば今のファストも十分戦える。地味にレベル上がって強くなってるしね。ってことでファストを降ろしてしばらく潜ってると最初のモンスターが出た。
とんがった鼻先と長く太い爪を持った子犬サイズの獣モンスター、モル。まぁ名前のまんまただのモグラある。
「さて、まずはほいっと」
俺は予めためてた魔法の玉を放ち、モルに当てる。いくらか遠慮した速度の明らかに手加減した魔法を打たれたモルはびっくりしたように地面に潜った。
「よし、今のでひとつ達成と」
今回のクエストの達成条件は『地底の魔宮で魔力運用観察・土1/5』となっている。今のモルもフレーバー的に土属性の魔力で地面を柔らかくしているとある。実際に掘削というスキルなのだが、こういう雰囲気作りみたいなフレーバー結構ある。まぁ攻撃スキルでもないのはこの手のクエスト以外にはほぼ使われないのだがな。
「で、出てきたとこに弱めの範囲魔法をほいっと。ファスト!」
「きゅう!」
モルが地面から出た音を頼りに辺り一帯に魔力の衝撃波をばら撒き確実に当てる。ファストには少し離れたところで待機してもらってるのでご安心を。
奇襲に失敗し逆に俺の魔法で怯んだモルにファストの飛び蹴りが炸裂。それが止めになったのかモルはあっさり光の粒となって砕け散る。
「順調だな。このまま2階まで突っ走るぞ」
「きゅ!」
ドロップアイテムもしょぼいし、ここにもう見るものもないのでモルを俺とファストでの二段攻撃で瞬殺しながら奥の下り階段に到着。門番的なものはないんでさっさと降りることにする。
二番めは大きなミミズ型モンスターのアースワームだ。こいつはミミズのくせして遠距離攻撃スキルを使ってくる。だたそのスキル噴土なのだが射出場所が、うんちょっとあれだ。どう見てもお尻の方で……この階での詳しい戦闘様相は省略する。ただ、俺もファストも死にものぐるいでソレを全部避けたことだけは明記しときたい。
「はぁ、無駄に疲れた……とにかく3階にも到着」
「きゅう……」
こころなしかファストも疲れてみえるが休んでる暇はない。それにここからがほんとに神経を使う場所なのだ。
「気を引き締めろよファスト。こっから本番だ」
「きゅ」
はて、この転職クエストは今までのを見た限りだとだいぶ楽では思うことだろ。だが甘い。この《イデアールタレント》においてジョブに関してだけは手を抜いたりしない。有能で強力なジョブほど得るためのクエストは難しい。この土魔法使いの転職クエストもその部類だ。
3階層の通路を拔けると広い空間が出る。そこには体高が俺の腰辺りまである巨大な亀が鎮座していた。こいつは亀型モンスターの
「来るぞ、掴まれファスト!」
「きゅう!」
スキル岩砲での無差別射撃。
砲門のように開いた甲羅から迫り出す半生体の砲身から無数の石礫をばら撒く凶悪なモンスターだ。
『地底の魔宮で魔力運用観察・土』は厄介なところがふたつある。見る攻撃は土属性であること、それを『地底の魔宮』内で見ることそれはいい。ただ最後の条件の“運用観察”というのがかなりネックだ。
で、このスキル岩砲は一度始まると砲身からは総数数百の石礫を絶え間なく連射する。そして俺はそれを見ないといけないから物陰に隠れたりは出来ない。ならどうなる思う?
「なんで魔法使いの転職で、体張った、シューティングゲームやんだよ!」
こればかりは本当に意味不過ぎる。ここの運営はいったい魔法使いに何を求めているのだ。
「あと2びょ、がぁっ!」
「きゅ!?」
あと少しのとこで頭に石が命中した。視界が一瞬ブラックアウトする。その昏倒の状態異常になってすぐに戻る、が。
それだけでも観察は失敗扱いになる。運用の観察は初めから終わりまでをしっかり見てないと無効になるからだ。これがこのクエストを難しくしてる一番の原因のひとつである。そしてもうひとつが三階以降のモンスターは全部――
キャノンタートルは既に岩砲を終えており次の動作に移っている。まずい。
「くそ、しくじった。撤退!」
「きゅう~!」
力んでいたキャノンタートルは一気に足を伸ばし、跳ぶ。そして一気に落ちた。
「揺れ……がっ!!」
「きゅう」
―― 進化1段めであることだ。
今のがふたつ目のスキル『地鳴』。範囲内にいると強制的に硬直状態になる範囲スキルだ。強制停止の時間がひるみ状態よりも長くあれをまともに喰らえば攻撃されるまで何も出来ないだろう。しかも余波だけでもめっちゃ動き辛い。そして地鳴なんて名前なのにこれは物理属性、理不尽! おのれ運営!!
「はぁ……どうにか凌いだ。うし、仕切り直し!」
ここからが俺たちとダンジョン『地底の魔宮』の熾烈な闘いの幕開けとなる。
――――――――――――――――――
追記
ここまで読んでくださりありがとうございます。つたない文章ですが今後よろしくおねがいします。
08・27 誤字・脱字修正しました。
08・29 展開上矛盾点が生じた文章を修正しました。
因みにフレンドリーファイアはないのでご安心を→ファストには少し離れたところで待機してもらってるのでご安心を。
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