番外編 運命に導かれし人間と魔剣

 これは魔剣争奪戦が終わった後に行われた、とある会話である。


「魔剣の能力名ってカッコイイな」


 レストランで食事をとりながらタローは目の前にいるタマコにそう口を開いた。

 ちなみにオムライスを食べている。


「なんじゃ突然?」


 タマコはパスタを頬張りつつ訊き返した。


「だからさ、憤怒の魔剣サタンだったら断罪執行サタナエルとか、強欲の魔剣マモン真相心理ザ・リアルとかさ。

 中二ごころをくすぐられるというかね? こう、グッとくるもんがあるのよ」


 この世に七振りのみ存在する魔剣。

 それぞれに固有能力が備わっており、一本でも持っていれば一国と戦争を引き起こせるほどの強力な力を持っている。

 もちろん所有者の実力にもよるが。


「たしかに粋な名前じゃのぉ。

 色欲の魔剣アスモデウス燃恋冷愛ラブ・ロマンスという名であったし。

 まさしく色欲に相応しい。エリスの雰囲気にもあっている」


 あのエロい、もといドエロい身体を思い出すタマコ。

 ちなみに各魔剣の能力名はと言うと、


 憤怒の魔剣サタン断罪執行サタナエル

 傲慢の魔剣ルシファー明之明星ルシフェル

 暴食の魔剣ベルゼブブ暴飲暴食ベルゼビュート

 嫉妬の魔剣レヴィアタン青龍降臨ブルードラゴン

 強欲の魔剣マモン真相心理ザ・リアル

 色欲の魔剣アスモデウス燃恋冷愛ラブ・ロマンス


 と、このようになっている。

 で、タローは思ったのだ。


怠惰の魔剣ベルフェゴールって、何て名前なの?」


 第19話から愛用している魔剣であるが、未だにその名は登場していなかった。

 これは別に作者が全く考えておらず出す機会を見失っていたとか、そういうわけではない。

 断じて、作者のミスではないのだ。


「(^- ω- ^;)」

(訳:いや、あの……)


 現在クマの姿になっている怠惰の魔剣ベルフェゴールことプー。

 怠惰の魔剣ベルフェゴールって名前いちいち出すのも面倒だからという理由で付けたプーという名前だったが、結局書くとき『怠惰の魔剣』にルビを振って『怠惰の魔剣プー』と表記したりするためそれほど意味がなかった悲しきマスコットである。

 そんなプーは露骨に目をそらすのであった。


「そういえば怠惰の魔剣ベルフェゴールの能力名は知らなかったのぉ……」

「おいプーさん。言っちゃいなよ~」


 何だか言いづらそうにしていたプーであったが、二人の視線に耐え切れず嫌々自分の能力名を言うのであった。


「(^- ω- ^;)」

(訳:……ふ、『形状不定フリーター』です)


「「……………………………………」」


 能力名は能力に相応しい名がつけられる。

 が、決してそれがカッコイイとは限らないのだ。


「……まぁ、俺にはピッタリだな」


 形状不定フリーターの能力名を持つ怠惰の魔剣ベルフェゴール

 そして、職業不定アルバイトで冒険者をやっているタロー。


 一人と一振りは、もしかしたら出会うべくして出会ったのかもしれない。

 そんなことを思いながらタマコは黙ってパスタを頬張り続けたのであった。

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