第6話 翔は翔だ
10月に全国の聾学校から集まる大会がオープンする。僕もこの大会に出場する。
僕と同じように耳が聞こえない生徒がたくさんいる。僕だけじゃないなと気づいて、妙に奮起している。
審判員が「準備はいいですか」と手話で伝えてくれた。
多くの生徒はOKと返事をした。
スタートブロックの前にあるランプが黄色が光った。これは「オンユアマーク」だ。
他の生徒と僕はスタートの位置につけた。位置をつけた後、上に広がる蒼空を眺める。ふーっと深呼吸をした後、白い線の後ろにそっと手を置いた。
耳が聞こえなくなったけど、耳が聞こえない人のために色々な配慮をしてもらえる。安心してスタートできる。これは平等ではなく公平になれるように考えていた。感謝の気持ちを込めて、最高の走りをしてやる。
ランプが白色になった。「セット」の意味。8人と一緒に腰を上げて、白色から赤色に変わったら、みんなが一気にスタートした。他の選手より反応が早くて、スタートは一番乗りだ。
耳が聞こえるか、耳が聞こえないか関係ない。ただ目標はみんなと共通点だ。この目標に向けて一生懸命に走る。風を切るような走ると気持ちいい。耳が聞こえない自分でも、自分は翔だ。どんな翔でも好きだ。
音のない 龍川嵐 @takaccti
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