第5話 再会
僕の体を揺さぶった。しかもやめずに何回も続けている。あまりしつこいので、仕方なく瞼をあげた。
あれ?あの光景はあの夢と同じ?僕の周りは真っ白。
キョロキョロすると、またあの人と出会えた。
僕のそばにいる浴衣を着ている半透明な朔太郎さんがいた。
「久しぶり。あの日以来、順調に過ごしている?」
「ああ、久しぶり。まあ、順調だけど。それで僕に何かの用?」
「あ、いや…あの、もう一度僕と交換しない?」
「はあ?君は聞こえる耳が欲しくて僕と交換したやろ」
「うっ、まあそうですけど。聞こえる世界に入ってみたけど、聞きたくない言葉が聞こえてしまう。耳を塞いでも聞こえてしまう。それが苦痛。君も聞こえる耳の方が良いよね?だから元に戻してあげるよ」
もしかしたら聞こえる耳を手に入れてから、聞こえる世界で実際に体験したみたが、肇さんの理想と異なっていたと言うことかな。そうだ、聞こえない世界は不便だけど、聞こえる世界も不便だ。
聞こえる世界は筆談なしで簡単にコミュニケーションを取ることができる。しかし、代わりに聞きたくない言葉も自然に入ってくる。胸焼けになるくらい聞こえてしまう。だからメリットだけなく、デメリットも必ずあるんだ。
この世は矛盾のある世界だ。
確かに聞こえる耳に戻りたい。でも、大切なものができてしまった。
「ごめん、断る。対等ではないと交換できない。僕は耳が聞こえないけど、耳が聞こえないおかげで新しい友達も出会いもできて本当に幸せだ。君は自己満足だけしか見えてないのが悪いんだ」
「あ…それは許して、どうか交換してくれない?」
「いや、断じて断り」
と言い残して、壁のない無限のような場所だけど、足を動かした。
あの人と一緒にいたくないので、ここから出る。ここで足を止めると過去に振り向いてしまうから。
突然、地面から水が溢れてきた。少しずつ水が増えていく。膝、腰、胸、僕の口の位置まで水位が上がっている。
「おーい、誰か助けて!」
ここで死んでしまう?全身が水に覆われた。息ができない…苦しい…
・・・・・・
苦しくてたまらなくて、瞼を開けた。僕が見た光景は、ペットボトルを僕の顔を垂らした。
「げほほっ!なっ、何をしてるの!?」
「あ、ようやく起きたか?ったくな、ちゃんと水分を取らないといけないわ」
え?僕は熱中症で倒れた?じゃあ、あの夢は…まさか死の世界?
どうやら僕は死の淵の近くに行ったらしい。本当なのかどうかわからないが、無事に生きていて本当に運が良かった。僕は甘い誘いを簡単に乗らずに自分の信念に貫いてきた。
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