第7話 私は◯◯よ

パチりと目を覚めしたら、天井が見えた。

俺は仰向けで寝ている?

「俊介さん、ようやく起きたか?」

奥から誰かの女性の声が聞こえた。首だけ動かしてみると、向こうの壁に背もたれをした。

「おお、芽衣さんか。いつから起きてた?」

「…俊介さんのいびきがうるさい。うるさくて起きたわ」

「マジか、いやぁ全然気づかなかった」

「はぁ、録音すればよかった…」

二人でどうでも良いことをダラダラと話す。

「———ねぇ、どうしてここに参加したの?しかも一人だけしか働けない。そんなリスクが高いゲームに誰にも参加したがらないはずのに、どうして参加した?」

「んー、別に特別な理由はない。ただ面白そうだなと思った」

後頭部の上に腕を組み合わせて、軽く背伸びをする。

何分くらい話したか分からないけど、向かい合って床に座ったので、腰が痛くなった。

「理由はそれだけなの?」

芽衣さんは顔に「なんだか面白くないな」と書いて、頭を傾けた。

「なんだ、悪いの?逆に聞くけど、こっちは?」

俊介さんに質問されて、ピクリとかすかに反応した。

「私?理由を知りたい?」

垂れ目になり、俺を嘲笑っているような笑顔を浮ぶ。

「なんだ、まさか人に言えない内容なの?」

「まさか〜そんなことないよ」

急にキャラが変わった?

さっきまでは、陰キャラで消極的だった。急に話し方が変わり、陽キャラみたいな話し方になった。

「聞いても驚かないでね。実は…私は殺人よ」

「え?」と発したいが、発することができなかった。

あまり衝撃しすぎて、言葉が出なかった。

「えーと、それって冷や汗を出すくらい冗談なの?」

「いいえ、違うわ。本当のことよ。私はね、二つの面を持っている。もう一つの面は陰キャラで普通の人。今の面は恐ろしいな思考で殺人だよ」

それって簡単に教えても良い内容でもないのに、なんですぐにバラすの?

分からない、全く意図を掴めない。

雰囲気を和むように笑顔をしてくれるけど、事実を知ってしまったので可愛いと思えない。

急に立ち上がって、俺のところに近づけてくる。

目の前に止まり、膝に手を置いて、俺の顔を近づけた。

「ただし、この事実を他の人に言ってはダメよ。

最後の言葉はゾッとする。

まさか命に関わるような秘密を作るのは予想しなかった。

クソっ、運悪く同じグループになってしまった…

「・・・」

俺は何も言わず、コクコクと頷いた。

「まあいいさ、ねえ耳を貸して」

ん?どういう意味なのか分からないけど、ここで逆らったらきっと殺されるかもしれない。だから俺は芽衣さんの指示に従って、耳を貸した。

「・・・・・・」

「…ッっ!」

喉から声を込み上げようにしたが、芽衣さんの手で口を塞がれた。

「静かにして、私の言葉は嘘でもない。俊介さんの望み通りに叶えてやるので、その代わりに私の言うことを従って。もし逆らったら、命が危ないよ」

ゴクリっと固唾を飲んだ。

再び顔を頷いた。

を実現するために作戦を考えているので、耳を貸して」

「ああ、分かった…」

狭い部屋の中で芽衣さんが俊介さんの耳に誰かに聞かれないように小さな声で囁いた。

話終わったら———瞬間にドアが開かれた。

「私のいう通りに行動してね」

「・・・」

なんだか首輪で繋がれた犬のような気分だった。

無言のままに二人で陰湿な部屋から出た。

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