第2話 金稼会社

メールの中に『私服でも良いです。訪問する時間は19時です。よろしくお願いします』と書いてあった。

なぜ昼間ではなく、夜なのかと分からなかった。

疑問を感じながら、集合するコンビニエンスストアで待っていた。

俊輔さんが来るまでスマホでいじった。

10分後くらいようやく来ていた。

集合時間より10分も遅れていた。

まあ、俊輔さんは遅刻するのが普通なので、本当の集合時間に合わせて、わざと時間を早めにしていた。

だからなんで遅刻してるのか!と怒鳴らない。

「よお!待ったか?」

手を挙げながら僕のところに近づいてきた。

俊輔さんの顔を見ると、申し訳ないという気持ちが顔に出ていない。

いつか詐欺師に騙される可能性も高いかもしれない。あとで注意をしてあげると良いかなと考えていた。

「ううん、ちょうど来てたよ。そろそろ行くか」

「ああ、楽稼会社に行くか」

コンビニエンスストアの近くに楽稼会社が構えている。

左右どこから見ても高いビルだった。

見上げようとすると、首が痛くなる。

このビルを見ると、このメールは本物だったか。

ということは僕の考えは間違っていた。

金稼会社は現実に存在している。

しかし、落ち込むより機体の方が大きかった。

これで楽に稼げると期待を満ちていた。

自動ドアを開けたら、すらりと黒いスーツと黒いサングラスを身につけている男性が並んでいた。

え?それってヤ○ザの組織じゃないかと冷や汗を流した。

「田中俊介様、加藤零様ですか?」

急に黒いスーツの男性に話しかけられた。

震えた声で返事をした。

「はい、例の場所に案内をいたします」

前に歩いて行った。

僕たちも黒いスーツの男性の後ろについて行った。

キョロキョロと社内を見渡すと、王様でも暮らしているじゃないかと豪邸な雰囲気だった。

「はい、到着しました。ここでお待ちにしてください」

黒いスーツの男性は向こうに去った。

僕たちはドアを自分で開けたら、他の高校生がいた。

男子二人、女子二人が退屈そうに待っていた。

「君も当選されたか?」

金髪で鋭いな目を持つ男子に話しかけられた。

その目に萎縮して、声がこわばっていた。

僕より俊介さんの方が先に返事をした。

「はい、当選されたよ。ここにいる高校生も当選された?」

「ああ、そうだわ。俺の名前は樹だ。君は?」

「俺の名前は俊介だよ。こっちは零だ」

僕まで紹介してくれた。

さすがコミュニケーション能力を発揮する俊介さんだね。

「君は女なの?」

樹さんに話しかけられた。

え?僕に女みたいに見えるのか?戸惑いをした。

「いいえ、僕は男です」

「え、マジか。見た目は女みたいに見えてたわ」

この言葉はムカつくけど、何度も言われたことがあるので慣れた。

「まあまあ、まずは自己紹介をしようか」

俊輔さんが言い出した。

「まずは俺から始めたいと思う。改めて俺は俊輔さんだ。よろしく。次は零さん」

「僕は零さんです」

次は樹さんに手を向けさせた。

「ふん、俺は樹さんだ」

次は眼鏡をかけている男子に。

「仁だよ」

自己紹介をするのがめんどくさそうなので、名前だけで済まそうとしているように見えた。

次は髪の毛の長くて、メイクをしている女子に。

「私は〜陽毬だよ」

キャッキャッと騒いでいて、陽キャなタイプに見えた。

次はショートの髪型で、陽毬さんと比べて発育の良い女子に。

「私は芽衣です。よろしくお願いします」

礼儀が正しそうけど、自分に自信がなさそうに見える。

全員が自己紹介を終えた。

手パンをしてみんなに話しかける。

「自己紹介をしてくれてありがとう。選べられた六人で仲良く楽々に働いていこう」

「クックック、六人で仲良く働く?それは子供らしいね」

後ろに誰かの声が聞こえて、後ろに振り向いたら茶色のスーツを着ている人がいた。

「おっとと、申し遅れましたが、私は山崎社長です。あなたは俊介様ですか?先ほど六人で仲良く働けると言いましたね。それは違います。です」

「え?一人だけ?残りはどうするの?」

青ざめた俊介さんを見た山崎社長は口角を釣り上げて言った。

「残りは社畜になってもらいます」

ざわざわと騒いだ。

陽毬さんは「マジか!ヤバい!」とギャル語しか発言していない。

芽衣さんは「いやだ、いやだ」と泣いていた。

仁さんはオロオロとしていた。

しかし、動揺していなかったのは樹さんだった。

「はっ?つまり六人と競争して奪い取るということなの?それなら誰にも負けないわ」

鋭いな瞳に火を燃えていた。

樹さんを見ると明らかに闘争心が高まっている。

俊介さんはため息を吐き、樹さんに戦いの宣言を渡した。

「ふー、やれやれ。スポーツに関しては誰にも負けないよ」

樹さんと俊介さんはお互いに見つめ合う。

陽毬さんが、ハイハイと言いながら手を挙げた。

「一人だけしか選べられないのはわかった。でも成功すれば後は一生に楽に働き続けれるよね。私も頑張るわ〜!」

仁さんと芽衣さんと僕は何も言わずにただ黙るだけだった。

温度差が激しいなと思った。

山崎社長がパンパンと手を叩いた。

「このゲームに参加するか参加しないか決めてください。参加する場合は、同意書に記入をお願いします。何かの不明点があっても私たちは責任を持ちません。このことをご承知おきください」

小声で俊介さんに話しかけた。

「どうするの?」

「え?どうするって参加するに決まってるわ」

「ちょっと、負けたら一生に社畜になるかもしれないけど?」

「リスクの高いかもしれないけど、緊張感があって楽しいじゃないか?」

ダメだ。

俊介さんはもう聞く耳がない。

どうする?友達を置いて僕だけ帰る?

しかし、俊輔さんだけやらせるのは不安がある。

「零さんは?」

仕方ないな。

「僕も参加する。友達ならどこまでも一緒にいるよね」

「ああ、もちろん零さんは俺の友達だ」

俊介さんは友達と言ってくれた。

しかし、何か引っかかる。

俊介さんの言葉と表情が一致していない。

なんだかいつもと違う笑顔が出てきた。

怪しいなと思いながら同意書に自分の名前をサインをした。

周りを見ると、全員参加するだそう。

棄権する人は一人も出ていない。

「皆さん、サインは終わりましたか?さてゲームを開始したいと思います」

目隠しをされた。

何をするかと思うけどおとなしくしておこうとした。

腕にスッと何か入れた。

目隠しをしているので何が起きていたのかわからない。

わからないので、山崎社長に話しかけようとした。

「何を打っ——」

突然、意識が朦朧になった。

そのまま床に倒れた。

倒れたが、当てられた部分は痛みが全然感じない。

そのまま瞼を閉じた。

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