第132話 魅了
あらすじ シンはコモロに性的に食べられた。
未知の体験だった。
目の前にいるのは灰色の肌の、爬虫類顔で髪の毛もないぬるっとした女である。言い方は悪いけど本当にバケモノとしか思えない。
好きになる要素がまったくなかった。
おっぱいの形はしてるけど乳首のない膨らみはゴムみたいな弾力だし、おしりは誘惑的な形をしていたけど触れると指が張り付くほど凍っている。口は僕の頭を飲み込めそうなほど大きいし、見つめてくる眼球はギョロギョロして怖い。
「なぁにがほしい?」
でも声だけは甘ったるかった。
「……あなたが」
そして僕は激しく心惹かれている。
全身が熱くて、頭がくらくらして、たまが痛いぐらい射精しているのに、おしりを掴んだ手が凍って動かせなくて、コモロさんが腰を動かすたびに幸せになっている。
おかしい。
すべてがおかしい。
それはわかっているのに。
「うん。良い子良い子ぉ」
そのぬるっとした肌を擦りつけられて笑顔と言うには凶悪な顔を見つめて、全身が溶けていくような感覚の中に動けなくなっている。
そして疲れ切っていた。
「ずいぶんと派手な食事だった」
ニドヘグが言う。
「久しぶりぃ?」
「ああ、コモロが正統派の魔女だったことを思い出したよ。魅了なんて流行らない古くさいものを忘れていなかったとは」
「ひどぉい」
コモロさんは拗ねるように首を傾げる。
「褒めているんだ。タイホンを手元に置いておくなら最適だろう。もう逃げることすら考えられないはずだ。最初から……いや、この状況が幸運だったな。スミレが戻ってきたら」
「僕に、なにを」
目の前で堂々とそんな話をして。
「あらぁ?」
「そう言えば忍者だった。忍魂のせいで魂への魅了が防がれている。意味はないが」
「大丈夫ぅ?」
「心配ない。コモロの魔法を解く術など……それこそ神でもなければ無理だ。もちろん産まれても封印する訳だからな」
「……」
ニドヘグが僕を煽っているのはわかる。
怒りは感じる。
「よぉしよし」
でも、コモロさんに頭を撫でられて、抱きしめられて、その冷たい身体に埋もれていると、僕の顔は緩んでしまって、力が入らない。
「搾り出した精液は」
「飛ばしたぁ」
「用意した胎の中で産まれてくれればいいが、この子供は相当の数の女を孕ませているからな、そちらも追跡せねばなるまい。あとはクノ・イチか。スミレの話が本当なら……」
ニドヘグはぐるぐると周囲を回りながら喋っている。僕は意識を集中しようとしていたけど、ダメだった。思考がどんどん崩れていく。
魅了。
魔法を使われた。
油断させておいて、一番えげつない。
「ごめんねぇ?」
コモロさんは微笑んだ。
そう感じる。
「だいじにするよ。一生……あと少しだけど」
「……く」
心惹かれながら、絶望が襲う。
役目が終わったら、僕も封印される。
「コモロ、そのくらいでいい。抱いた女の話を聞いていかなければ。鳩の卵の連中に気取られる前に、こちらも準備を進めなければ」
「……」
歯を食いしばろうとした。
でも、僕の顎からは力が抜けていて、ただ涎が垂れるだけだった。頭がくらくらする。目は開いているのに、眠っているような感覚。夢を見ながら、起きたくないと考えているような。
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